放射性物質の過剰投与ごまかすため、放射線技師が記録改ざん。
2011/09/04 コンプライアンス, 民法・商法, その他
放射性物質の過剰投与ごまかすため、放射線技師が記録改ざん。
甲府市立甲府病院の男性放射線技師(54歳)が、腎臓疾患を患っている15歳以下の子ども84人に対し放射性物質テクネチウムを用いた検査を行った際、医師の指示を仰がず独断で、日本核医学会推奨の基準を大きく超えるテクネチウムを投与していたことがわかった。
そればかりか、同放射線技師は、記録簿の数値を実際の投与量よりも少ない数値に改ざんして記録していたという。
事件の概要
1.改ざんの具体的内容
記録が改ざんされていたのは「放射性医薬品使用記録」。日本核医学会は、成人に対しては、最大185メガ・ベクレル、15歳未満に対しては年齢に応じて順次これを減らした数値を推奨量としている。
さらに、放射性物質の具体的投与量の決定については、基本的に必ず医師が関与し、放射線技師が独断で行わないよう指導している。
今回、問題となった84人のうち、41人は年齢に応じた投与推奨量の10倍以上のテクネチウムを投与されたにも関わらず、男性放射線技師は、日本核医学会推奨の示す成人への推奨投与量である「185メガ・ベクレル」と一律に記入していた。
なお、「185メガ・ベクレル」は、保険診療での請求が可能となる上限値でもある。
2.今回の事件に対する男性放射線技師の供述
この男性放射線技師は、過剰投与については、「子供は動き回るので鮮明な画像を短時間で撮るため多く投与した」とし、記録改ざんについては、「実際の投与量だと監査にひっかかるので、そのようにした」と証言しているという。
雑感
今回、過剰に放射性物質を投与された子どものうち、内部被ばく量が最も大きかった子で180ミリシーベルトの被ばく量だったそうだ。200ミリシーベルト以下の被ばく量では、急性の臨床的症状は認められないとされているが、発がんなどの長期的なリスクについては未だ否定できない。
医療被ばくは、治療や検査の過程で、どうしても生じてしまうものであるが、多くの医療機関はこれを最小限にとどめるよう組織として取り組んでいるのであり、今回のような検査による被曝は診断が可能な画質が得られる最低限に抑えるのが大原則である。
それにも関わらず、検査の時間短縮のため、専門家に「常軌を逸した数字」と驚愕されるほどの量の放射性物質を子どもに投与し、発がんリスクを負わせる。放射線を用いた治療・検査のプロたる倫理観はどこへ行ったのか。さらに、それを隠ぺいし、尚且つ、保険診療請求を行う目的で投与量を改ざんするなど、もっての外である。
やはり、組織体としての病院でルーティーンと化した業務をこなすうちに、コンプライアンスの意識は失われるものなのであろうか。
病院側のこの放射線技師に対する指導の甘さもあったのだろうが、これらの行為が長年行われ続けて来たにも関わらず、今まで発見できなかった病院側のチェック体制の不備も指摘される。
従業員に対する法令遵守の認識付けとその実践状況のチェック。今や、コンプライアンス体制作りは、企業のみならず、病院においても強く求められている。
関連コンテンツ
新着情報
- 業務効率化
- Lecheck公式資料ダウンロード
- 業務効率化
- クラウドリーガル公式資料ダウンロード
- NEW
- ニュース
- 生理休暇中に旅行、休暇の不正取得を繰り返した女性教諭が懲戒免職に2025.1.9
- NEW
- 大阪府教育庁は2024年12月26日、生理休暇や介護休暇の不正取得などを常習的に繰り返していた...
- 解説動画
- 浅田 一樹弁護士
- 【無料】国際契約における準拠法と紛争解決条項
- 終了
- 視聴時間1時間
- 弁護士
- 松田 康隆弁護士
- ロジットパートナーズ法律会計事務所
- 〒141-0031
東京都品川区西五反田1-26-2五反田サンハイツビル2階
- セミナー
- 豊泉 健二 氏(古河電気工業株式会社 法務部 部長)
- 藤原 総一郎 氏(長島・大野・常松法律事務所 マネージング・パートナー)
- 板谷 隆平 弁護士(MNTSQ株式会社 代表取締役/ 長島・大野・常松法律事務所 弁護士)
- 【12/16まで配信中】CORE 8 による法務部門の革新:古河電気工業に学ぶ 人材育成とナレッジマネジメント
- 終了
- 2024/12/16
- 23:59~23:59
- 弁護士
- 目瀬 健太弁護士
- 弁護士法人かなめ
- 〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満4丁目1−15 西天満内藤ビル 602号
- 解説動画
- 大東 泰雄弁護士
- 【無料】優越的地位の濫用・下請法の最新トピック一挙解説 ~コスト上昇下での価格交渉・インボイス制度対応の留意点~
- 終了
- 視聴時間1時間
- まとめ
- 中国:AI生成画像の著作権侵害を認めた初の判決~その概要と文化庁「考え方」との比較~2024.4.3
- 「生成AIにより他人著作物の類似物が生成された場合に著作権侵害が認められるか」。この問題に関し...