沖縄局長不適切発言で首相お詫び・・・評価書年内提出方針は変わらず
2011/12/01 法務相談一般, 民法・商法, その他
1.概要
野田首相は30日午前、沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題を巡り、防衛省の田中聡前沖縄防衛局長が不適切発言で更迭されたことについて、「更迭は当然の措置だった。県民に大変ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ない。心からおわびを申し上げたい」と陳謝した。そのうえで、同移設問題をめぐり年内に環境影響評価書を沖縄県に提出する従来の方針について、首相は「『正心誠意』を徹底していなかったことは極めて遺憾だが、改めて襟を正し、緊張感を持って説明し、理解いただけるように全力を尽くしたい」とし、年内提出の方針を変更しない考えを記者団に示した。また首相は、田中氏の発言を受けた29日の記者団の問いかけに無言を貫いたことについて、「まずは担当(の防衛)大臣から記者会見して対応を知らせるのが先だろうと思った」と述べた。
田中氏は28日夜、那覇市内での記者懇談で、防衛相が辺野古移設への環境影響評価書の提出時期を明言していないことについて女性を乱暴することに例え、「犯す前に(これから)『やらせろ』とは言わない」などと不適切な発言をした。そのため、同氏は29日付で大臣官房付に更迭されている。
防衛省の中江公人次官は30日午後、沖縄県庁で仲井真弘多知事と面会し、田中氏の発言をおわびし、対応を説明した。知事は「局長発言は極めて遺憾としか言いようがない。県民の信頼を傷つけた。回復は難しい」と述べた。
2.雑感
今回の田中氏の不適切発言を受け、沖縄では怒りの声が広がっている。嘉手納町の沖縄防衛局には29日朝から、「許せない」「すぐに局長を交代させるべきだ」などという抗議の電話が相次ぎ、職員が対応に追われる事態となった。
一川防衛相は同日夜、防衛省で緊急記者会見を開き、「弁解の余地はない」と厳しい口調で更迭を発表したが、着任からわずか3か月半での更迭劇に対する反響は大きく、移設計画への影響は避けられないであろう。移設問題はさらにこじれることが予想される。
田中局長は1984年に旧防衛施設庁に入庁したキャリア官僚である。基地問題に長く携わり、省内では「基地問題のエキスパートの一人」とされてきた。同省の事情聴取に対し、田中局長は「女性や沖縄の方々を傷つけ、不愉快な思いをさせ申し訳ない」などと謝罪の言葉を述べたという。
そもそも、普天間基地返還運動の契機となったのは、平成7年の米兵の少女暴行事件である。そのような経緯を考えると今回の田中氏の発言は、あまりに不適切かつお粗末なものと言わざるを得ない。
政府は同氏を更迭し、首相や中江次官がお詫びを表明するなど、事態の早期収拾を図ってはいるが、米軍普天間飛行場移設問題の新たな障壁が生じたといえる。このような状況下で従来の方針通りに環境影響評価書を提出したとしても、仲井真知事の理解を得ることは難しいであろう。
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