改正女性活躍推進法(2022年4月)へのコンプライアンス対応まとめ
2022/10/21 労務法務, コンプライアンス, 労働法全般
はじめに
女性活躍推進法が改正されて約6ヶ月。ダイバーシティ&インクルージョンを経営戦略と位置づけ、女性活躍推進に対する積極的な取り組みを行う企業の事例を耳にする機会が増えて来ました。改正女性活躍推進法への対応については、人事・総務が対応している企業が少なくありませんが、法務が対応している企業もあります。本記事では、改正女性活躍推進法(2022年4月)へのコンプライアンス対応についてまとめます。
改正女性活躍推進法への対応が必要な企業
法改正前は、女性活躍推進法上の義務を負う対象となっていたのは、「国・地方公共団体・常時雇用する労働者が301人以上の民間事業者」に限定され、従業員300人以下の中小企業については努力義務に留まっていました。しかし、改正女性活躍推進法では、法的義務を負う対象が「国・地方公共団体・常時雇用する労働者が101人以上の民間事業者」に拡大しています。
義務履行のために行うべき施策
女性活躍推進法では、対象企業に対し、以下の3つの義務が課されています。
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1.自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析
以下が「基礎項目」として、必ず把握すべき項目になります。
(1)採用した労働者に占める女性労働者の割合 ※
→直近の事業年度における、女性採用者数÷採用者数×100
(2)男女の平均継続勤務年数の差異 ※
→女性の平均勤続年数÷男性の平均勤続年数
(3)管理職に占める女性労働者の割合
→女性の管理職数÷管理職数×100
(4)労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間の状況
→(法定時間外労働時間+法定休日労働時間)÷労働者数
※職種、資格、雇用形態、就業形態等の雇用区分ごとの把握が必要な項目
上記の基礎項目を中心に課題分析・原因分析を進めることになりますが、より分析を深めるうえで、以下のリンクに示された選択項目(必要に応じて把握する項目)を活用することも推奨されています。
2.状況把握・課題分析を踏まえた行動計画の策定・届出・公表
1.の状況把握・課題分析を終えた後は、そちらを踏まえ、
・計画期間
・1つ以上の数値目標
・取組内容
・取組の実施時期
を盛り込んだ一般事業主行動計画を策定したうえで、労働者への周知および外部への公表(HP等)を行う必要があります。
その後、一般事業主行動計画を策定した旨の届出を所管の都道府県労働局へ電子申請、郵送または持参により行います。
【行動計画届出の書式】
・様式第1号 一般事業主行動計画策定・変更届(女活法単独型)[DOC形式:85KB]
【課題に応じた行動計画の策定例】
・一般事業主計画の策定例(女性の活躍推進企業データベース)
【参考:労働者5001人以上の大企業における特徴的な取組事例】
女性活躍・両立支援に積極的に取り組む企業の事例集(厚生労働省)
3.女性の活躍に関する情報公表
行動計画を届出した後、定期的に数値目標の達成状況や、一般事業主行動計画に基づく取組の実施状況を確認・評価する必要があります。その上で、自社における女性活躍に関する状況につき、以下から1項目以上選択したうえで情報公表しなければなりません。なお、公表は、求職者等が簡単に閲覧できる形で行う必要があります。
① 女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供
・採用した労働者に占める女性労働者の割合(区)
・男女別の採用における競争倍率(区)
・労働者に占める女性労働者の割合(区)(派)
・係長級にある者に占める女性労働者の割合
・管理職に占める女性労働者の割合
・役員に占める女性の割合
・男女別の職種又は雇用形態の転換実績(区)(派)
・男女別の再雇用又は中途採用の実績
② 職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備
・男女の平均継続勤務年数の差異
・10事業年度前及びその前後の事業年度に
採用された労働者の男女別の継続雇用割合
・男女別の育児休業取得率(区)
・労働者の一月当たりの平均残業時間
・労働者の一月当たりの平均残業時間(区) (派)
・有給休暇取得率
・有給休暇取得率(区)
※「(区)」は、職種、資格、雇用形態、就業形態等の雇用区分ごとの公表が必要な項目
※「(派)」は、労働者派遣の役務の提供を受けている企業において、派遣労働者を含めて公表を行うことが求められる項目
コメント
2021年における女性就業者数は約3057万人(労働力調査(基本集計)2021年より)となっており、10年前と比較して300万人近く増加しています。また、上場企業における女性役員数は、この10年で約5倍に増加しており、まだまだ十分とは言えないものの、各社の取り組みの成果は着実に実を結びつつあります。
10月20日に労働新聞社にて紹介された女性活躍推進の成功事例として、SOMPOひまわり生命保険株式会社の事例がありました。同社では、直属の上司がマネジメントに関するOJT(オンザジョブトレーニング)を実施したり、他部署の管理職との交流の機会を設けるなど、研修・教育面を充実させることで、女性管理職比率の向上を図っているとのこと。2016年の女性管理職比率が5.5%だったところから、現在では24.8%まで増加しているそうです。
ESG投資(財務情報のみならず、環境・社会・ガバナンス要素も考慮した投資のこと)が広がりを見せる中、現在では、約55%の機関投資家がESG投資判断に女性活躍情報を活用していると答えています。法務の立場から、自社の企業価値を上げるうえで、女性活躍推進に対する各社の取り組みにアンテナを張ることが求められています。
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