東証・大証の現物株市場統合
2013/07/16 商事法務, 会社法, その他
事案の概要
日本証券取引所は、16日、東京と大阪の両証券取引所の現物株の市場を統合し一本化する。
東証と大証は今年1月に持ち株会社をつくり、経営を統合した。
これに伴い、7月16日、大阪証券取引所にのみ上場していた1100社が東京証券取引所に移り、両証券取引所の現物株の市場が統合される。さらに、来年3月には東証の先物市場を大証に統合される。
今回の統合により、東証の上場社数は3400社を超え世界第3位となり、現物株の売買代金もニューヨーク証券取引所、ナスダックに次ぐ世界第3位となる。
コメント
【統合のメリット】
(1)東証と大証が統合することで、取引システムの統合によるシステム費用削減が望める。
これにより、年間約85億円の経費の削減ができると見込まれているので、その資金により高速取引にも対応できるようなシステムの改善が可能となる。
(2)デリバティブ取引における清算の共通化、自主規制機能の共通化などによる効率性向上が期待できる。
(3)巨大市場の誕生という話題性により、投資家の目を日本に向けさせ、多くの資金を呼び込むことができる。
【統合のデメリット】
(1)1部指定基準や2部指定替え基準、上場廃止基準も東証基準となる。
東証2部マザーズに上場している企業のほうが大証2部ジャスダックに上場している企業よりも東証1部、2部に昇格する条件が緩いので、東証の基準を満たさない大証上場企業は上場廃止になる恐れがある。
上場廃止基準について
①株主数
大証1部、2部では単元株主数が150人以上存在すれば上場基準をクリアするが、東証1部、2部では単元株主数は400人以上が必要となる。
②時価総額基準
13年12月までは大証であれば3億円以上でクリアできるが、東証では6億円以上が必要となる。現在は緩和されている東証の基準も14年1月を過ぎれば通常対応に戻され、10億円以上に引き上げられる。
など
(2)日本取引所グループは日本国内の現物株やデリバティブ取引などで100%に近いシェアを占めるようになり、独占化による経営規律の弛緩、効率性やサービスの質の低下の恐れがある。
【今後の課題】
取引市場が拡大しただけで、売買の増加を見込めるとは限らない。話題性による売買の増加も長くは続かないと考えられる。
そこで、更なるシステムのスピード化、東京商品取引所との統合による総合取引所の実現などにより、現状6割を占めると言われる外国人投資家を更に呼び込むことができるかが課題となる。
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