民法改正、消費者保護を重視し要綱案取りまとめを目指す
2013/09/04 法改正対応, 民法・商法, 法改正, その他
事案の概要
法制審議会の民法部会は9月から、契約に関するルールなどを定めた条文の改正に向け、本格検討に着手し、2015年1月までの要綱案取りまとめを目指すとしている。法務省はこれを踏まえ、同年の通常国会に民法改正案を提出する方針。
今回の改正は、民事基本法典である民法のうち債権関係の規定について,同法制定以来の社会・経済の変化への対応を図り,国民一般に分かりやすいものとする等の観点から,国民の日常生活や経済活動にかかわりの深い契約に関する規定を中心に見直しを行う必要があるとしている。改正内容は消費者保護に力点がおかれ、経済界は、公序良俗(民法90条)、錯誤(民法95条)に関する改正と契約締結過程における情報提供義務、約款の規定の新設に反対をしている。
コメント
今回の民法改正のうち債権法分野の改正は、社会・経済の変化への対応を図り,国民一般に分かりやすいものとするという点では、経済界も弁護士等の法曹実務家も意見が一致している。現在行なわれている取引に関するルールの明確化と評価されるものは予測可能性を高め取引の安全に資するから、将来の経済の活性化に繋がる規定に関する改正は行なうべきであろう。
もっとも、今回の改正は、消費者保護に力点を置いていることから、企業への取引コストが増えるおそれがある。特に今回の民法改正で新設される約款規制がインターネットビジネスへ大きな影響を及ぼすことが懸念される。その懸念とは、約款使用者が「相手方が合理的な行動を取れば約款の内容を知ることができる機会」(中間試案第30約款第2項)をどの程度確保すれば足りるのか不明確であり、また、約款の内容を知ることができる機会は相手方が「合理的な行動を取れば」という相手の属性にも左右されかねず、画一的な大量処理を目指す約款本来の役割が損なわれかねない点である。
以上の問題点を踏まえて、「相手方が合理的な行動を取れば約款の内容を知ることができる機会」(中間試案第30約款第2項)の文言は、「相手方に対して認識できる程度に期待可能な形で与えること」等の文言を用いるべきである。相手方の「行動」という文言に起因する問題は生じにくいからである。
経済取引の基本法たる民法は経済社会に与える影響も大きいことから、改正内容についてはさらに突き詰めて議論をしていく必要があるだろう。
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