消費者被害の一括救済へ、消費者訴訟特例法が成立。
2013/12/09 法改正対応, 消費者取引関連法務, 法改正, その他
事案の概要
消費者訴訟特例法は、国が認定する消費者団体が多数の個人に代わって訴訟を提起し、その一括的な救済を図る制度を定めたものとなっている。悪徳商法等による消費者トラブルにおいては、訴訟費用等を理由に個人が救済を受けることを諦めることが多く、救済の実効性を確保する必要が生じていた。
まず、新たな訴訟制度において主体になるのは、全国に11ある適格消費者団体の中から国が新たに認定した団体である。
次に、訴訟手続きは二段階になっている。まず、この団体が消費者の相談を基に事業者に対する訴訟を提起する。この訴訟では、事業者が多数の消費者に対して共通して負う義務を確認する。そして、この訴訟で勝訴あるいは和解した場合に、同様の被害を受けた消費者にも通知をした上で、個別の消費者ごとの救済手続きに移行する。この手続きにおいて、誰に、いくら支払うかが決定される。
新たな制度では、現行の制度と異なり、事業者の不当な行為に対する差止請求にとどまらず、損害賠償を請求できることとなった。ただし、損害賠償請求の対象となるのは消費者が受けた財産的な損害であり、生命や身体に対する損害は含まれない。また、精神的苦痛を受けたことによる慰謝料の請求も認められない。
ただし、消費者団体からの濫訴等により事業者の事業に不当な影響が生じる恐れがあることから、附則において、ガイドラインの設置等を念頭においた「必要な措置」が講じられることとされた。
コメント
今回の消費者訴訟特例法のうちでも特に、現行では認められていなかった損害賠償請求を可能としたことは、泣き寝入りしがちな消費者にとっては重要な役割を果たすことだろう。反面、事業者は場合によっては多額の賠償責任を負うこととなるが、昨今の食品偽装問題でも明らかになった通り、企業が社会に対して負う責任の大きさを改めて自覚する必要がある。
消費者訴訟特例法は2016年には施行される見通しである。施行までに消費者および事業者双方に対し制度に関する周知徹底していくことが求められる。例えば、消費者は消費者団体を通して裁判所への債権の届出を行なわなければ、事業者に対する債権を時効により失うおそれがある。また、事業者は多数の消費者に対して損害賠償義務を負いうることになる以上、消費者契約に関するトラブルを防止するための策を講じることがさらに重要になるだろう。
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