2013年の重大ニュースを振り返る~食品偽装問題のその後~
2013/12/18 コンプライアンス, 民法・商法, その他
はじめに
ホテル・旅館、百貨店、飲食店。今回の食品偽装問題が発覚した業種は多岐にわたる上、多数の企業に及ぶ。
以下では、業種ごとに分類した上で、いくつかのケースにつきその偽装内容と企業の対応をまとめてみた。
ホテル・旅館
・阪急阪神ホテルズ(8ホテル1事業部の23店舗)(10月22日公表)
【偽装内容】
「鮮魚」「フレッシュジュース」等と記載しつつ、それぞれ冷凍保存の魚や既製品のジュースを使用する等47品目を偽装。
【対応】
22日に記者会見およびHP上で公表。同月24日の会見では、「誤表示」であることを強調。再調査後の同月28日の会見において、再度偽装の意図は否定するも、社長が引責辞任を表明。
その後、社長直轄の品質管理委員会の設置や、新たな社外監査役を任命するなど機構改正や役員人事の刷新を行った。さらに、11月7日にはメニュー表示の適正化に関する第三者委員会を設置。各グループ会社への調査結果も公表した。
阪急阪神ホテルズHP
・リーガロイヤルホテル(大阪など4ホテル)(11月19日公表)
【偽装内容】
中華レストランなどで、メニューに「車海老」「芝海老」と記しながら、実際にはブラックタイガーやバナメイエビを提供するなど。
【対応】
今年6月、東京ディズニーリゾートホテルで虚偽表示が発覚したことを受けて調査した上で問題を確認。社長に報告するも、公表は行わず。11月5日に経営陣で問題を検討の上、同月19日に会見およびHP上に公表。再発防止策として社員研修の徹底や監視体制の強化を提示。利用客にはホテルの利用券を渡すとのこと。
リーガロイヤルホテル お詫びとお知らせ
百貨店・飲食店
・三越伊勢丹(百貨店8店舗および1子会社のレストラン14店舗)
【偽装内容】
「芝海老」、「宮崎県産」の豚と表示するも、実際はそれぞれ「バナメイエビ」、「岩手県産」の豚を使用。
【対応】
一連の報道を受け調査の上、11月6日に会見およびHP上で公表。その際、利用客には返金することも発表。その後同月29日にHP上で役員報酬の一部返上という内部処分を発表。なお、公表の前日には、同じく百貨店大手の高島屋が公表を行っていた。
・不二家フードサービス
【偽装内容】
「ステーキ」と表示している肉に、取引先工場で下ごしらえした牛肩ロース(成形肉)または牛フィレ肉(成形肉)を使用。
【対応】
11月8日にHP上にお詫びとお知らせを掲載。対応策として返金ではなく、公益財団法人国際開発救援財団(FIDR)を通して、「東日本大震災被災地の子どもたちの部活動支援」のための寄付をすると発表。
不二家フードサービス お詫びとお知らせ
コメント
日本においては、過去にも食品偽装が問題化し、その都度世間を騒がせた。近年では、賞味期限を偽装した雪印や赤福、石家製菓。違法な食品添加物が混入していたミスタードーナッツなどのケースが問題となった。
これらに対し、今回の食品偽装問題の多くは、食の安全そのものに関わる偽装ではなく、食のブランドを偽装した点が特徴的である。ただ、いずれにしろ消費者の信頼を裏切ることに変わりはない。むしろ、ブランドの偽装は安全面に問題がないとして軽率に行われうる点で再発のおそれは高い。真摯な再発防止策の検討が求められる。
再発防止策を策定した際には、積極的な情報発信が重要ではないかと思われる。例えば、阪急阪神ホテルズはHP上に多くの対応策が掲示されている。これに対し、リーガロイヤルなどは情報発信が少ないように思われる。不祥事に対し迅速に対応することは当然重要であるが、その後の企業としての取り組みについても情報発信することが信頼回復の点で重要と思われる。
また、公表のタイミングであるが、他社と足並みをそろえることは心情としては理解できなくはないが、より迅速に公表し、その後情報発信を続ける方が結果として信頼回復につながるのではないかと思える。
さらに、対応策として利用券の提供や返金をすることが多く見られる中、不二家フードサービスの寄付という対応はいまひとつ不祥事との関連性が見えづらいと思える。消費者目線での検討が求められるのではないか。
食品表示偽装が相次いで発覚した台湾では、先日、今年の世相を表す漢字として、偽りなどを表す「假(か)」が選ばれた。
今年の漢字は「偽」でした。そんなことにならないよう、各企業には徹底した再発防止策と情報発信が求められる。
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