過労死等防止対策推進法案が衆議院を通過 ~過労死対策は国の責務と初めて明記~
2014/06/05 労務法務, 労働法全般, その他
事案の概要
長時間労働などによる労働者の過労死や過労自殺の防止を目的として「過労死等防止対策推進法案」が23日、衆議院厚生労働委員会で全会一致により可決、27日に衆議院を通過した。今国会中には成立する見通で、公布後6ヶ月以内に施行される。
厚生労働省の発表によると、2012年度に過労や仕事のストレスから脳・心臓疾患を発症し労災認定を受けた人が2012年度は、前年度の1.5倍の475人で3年連続で過去最高を更新した。死亡者は123人おり、未遂を含む自殺者は93人と、27人増えてこちらも過去最高だった。
そのような実態を踏まえて、法案は過労死や過労自殺について、業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患や精神障害を原因とする死亡や自殺などと定義。
過労死対策は国に責任があることを、初めて法律に明記した。
過労死防止法案は超党派による議員立法であり、過労死の実態の調査、防止策を求め、地方公共団体や事業主も協力するように促している。
具体的には、
・過労死等問題啓発週間を設けること
・過労死を防止するための施策の実施の状況に関する報告書の国会への提出
・過労死等防止基本計画の策定
・国や自治体に過労状態の人や家族の相談窓口を設けること
・過労死防止対策協議会を設けること
・民間団体を支援すること
などを内容とする。
もっとも、この法案では具体的な労働時間の規制など、企業に対する規制は盛り込まれておらず見送られている。
コメント
今回の過労死防止法は、過労死に対し国に責任があることを初めて明記した点で意義がある。しかし国に調査・防止策を求める一方で、企業に対する規制は盛り込まれていない。終身雇用制を前提とする日本企業では、繁忙期に従業員への長時間労働を強いることで対応を図る傾向が強く、過労死の原因にもつながっているが、本法律では企業への労働時間の規制を義務付けることにならない。そのため本法律の制定だけでは企業に対する直接的な影響は生じず、改善へ大きな期待も望めないと考えられる。もっとも今後の過労死研究が進行することにより検討すべき事項が整理され、企業側の対策すべき義務も明確になってくる。これにより雇用における安全配慮義務違反も認定されやすくなり、過労を原因とする労災認定が認められやすくなることが期待できる。従って、間接的には過労死の改善に資するといえる。いずれにしろ国の対応は始まったばかりであり、企業に規制がなされるかを含め今後の動向が注目される。
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