患者とのコミュニケーションに関する薬剤師調査 その有効性と課題
2014/08/20 法務相談一般, 民法・商法, その他
事案の概要
日本最大級の病院検索サイト、医薬品検索サイト、医療情報サイトを運営する総合医療メディア会社の株式会社QLifeは、薬剤師を対象とした抗凝固薬を服用する患者とのコミュニケーションに関する調査を行った。この調査により、薬剤師と患者とのコミュニケーションが重大な事態を防ぐためのセーフティネットとなっていることが判明した。
一方、患者の聞きたい情報と薬剤師が伝える情報との間にギャップが存在することも明らかになった。
抗凝固薬とは
ワーファリン(ワルファリン)、プラザキサ等の血液を固まらせないようにする医薬品(抗血栓薬)のうち、凝固系に対して主に作用するものので、心筋梗塞、脳卒中の患者等に用いられる。長期にわたって服用する必要があり、また、食べ合わせの制限等の生活上の注意が必要となることや、副作用が存在するものがあることから、用法を誤ると重大な事態が生じるおそれがある。
コミュニケーションの効果 「重大な事態の予防」
今回の調査では、8割以上の薬剤師が抗凝固療法の患者に対し「毎回」「時々」注意すべき点などを伝えている一方、3人に2人の薬剤師が抗凝固薬・療法について、患者から相談・質問を受けているなど、薬剤師と患者との間で頻繁にコミュニケーションがとられていることが明らかとなった。
また、約3割(30.3%)の薬剤師が重大な事態を引き起こしかねない「ヒヤリハット事例」を患者から見聞きしているとの調査結果も明らかとなった。薬剤師・患者間のコミュニケーションが重大な事態を予防するセーフティネットとなっていることが分かる。
薬剤師と患者とのコミュニケーションにはギャップも
ただし両者間のコミュニケーションについては課題も見つかった。「抗凝固療法下の生活上の注意点(飲み合わせ、食べ合わせ、他科受診時の注意点)」「抗凝固療法の副作用」についての質問・説明は薬剤師側・患者側の双方で多いものの、「新旧の抗凝固薬のメリット・デメリット」については、薬剤師側の説明が26.1%に対して、患者側からの質問が30.3%で、両者の間にコミュニケーションギャップが見られることも分かった。
コメント
患者の生命・身体に直接関わる医薬品の分野はもちろん、そのほかの製品についても、提供者と消費者との間のコミュニケーションは、事故発生による説明義務の不履行による契約の取消(消費者契約法4条)や、損害賠償請求(民法415条、709条)などの法律上のトラブル防止のためのセーフティネットとして重要な役割を果たしている。しかし、両者の間には知識量の差から、消費者が本当に必要な情報を自らもとめることが出来ないことや、あらゆるリスクを予防するため一度に大量の情報を与えた場合、消費者側が適切に理解できないとこも考えられる。
確かにコミュニケーションは大事ではあるが、その回数・内容は製品の内容・使用状況に応じて工夫する必要があり、それがこの問題を複雑なものにしている。
関連サイト
3割の薬剤師が患者の「ヒヤリハット事例」に遭遇。薬剤師が患者に伝える情報と患者が薬剤師から聞きたい情報にギャップも
薬剤師対象抗凝固療法患者とのコミュニケーションに関する実態調査結果報告書(pdf)
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