改正会社法 主要な変更点まとめ
2014/10/09 商事法務, 法改正対応, 法改正, 会社法, その他
主要な変更点
・監査等委員会設置会社の新設
・社外役員の要件変更
・上場会社に対する社外取締役設置の事実上の義務付け
・多重代表訴訟制度の創設
監査等委員会設置会社制度の新設
従前から、取締役会を監督する機関として、監査役会設置会社と委員会設置会社という制度が存在していた。
しかし、監査役は、株主総会から直接選任されるものの、取締役会の判断が違法でないかどうかについてしか監督することができていなかった。
例えば、一定のリスクはあるが、成功すれば大きな利益を生むというビジネスジャッジメントの結果、会社に多大な損害が生じたとする。このジャッジメントが法に違反していないが、業界に精通した者として疑問が残るものだったとしても、監査役は何も口出しすることはできない。
他方、委員会設置会社の監査委員会は、取締役会が違法な行為をする場合だけでなく、不当な行為をしようとしていないかについても監督することができていたが、株主総会から直接選任されるわけでないため、株主総会による監督が十分には行われていなかった。
改正会社法で設置されることになった監査等委員会設置会社は、両者の丁度中間に位置する制度である。つまり、監査等委員会は、株主総会から直接選任される上に、取締役会が違法なことや不当なことをしないように監督する、というものである。
今回の監査等委員会設置会社制度が新たに加わることによって、株式会社としては、監査の選択肢が広がったというのが、大きなメリットとなるだろう。
社外取締役等要件の変更
従前の会社法では、社外取締役等について、①過去に一度でも当該株式会社の取締役等になっていると、当該会社の社外取締役等となることはできず、また②当該会社の取締役等の親族であっても社外取締役等になることができるとされていた。
しかし、上場しているような会社では、社外取締役を設置しなければならないにもかかわらず、取締役の適格を有しているような有能な人材の数が限られており、人材の確保が困難であるという問題があった。また、過去に取締役等を行っていた者は、社内の人間との関係性から適切な監査ができないことから、社外取締役等になることができなくなっていた。にもかかわらず、その近い親族が社外取締役等となった場合でも、身内である取締役に対して適切な監査ができるのかという問題があった。
この点について、改正後会社法では、
①当該会社又はその子会社の役員であったときから10年経過すると、社外取締役等になることができ、②社外取締役等の配偶者又は二親等以内の親族は、社外取締役等になることができないというように変更された。
上場会社に対する社外取締役設置の事実上の義務付け
上場会社では、会社の業務活動の範囲が広く、社会的な影響が大きいため、取締役会が違法な行為をしないだけでなく、不当な行為をしないようにする必要がある。
そこで、改正327条の2では、監査役設置会社が公開会社、かつ大会社で、有価証券報告書の提出義務が課されている場合において、社外取締役を置かないとき、当該会社は社外取締役を置くことが相当でない理由を株主総会において説明しなければならない、とされるようになっている。
この監査役設置会社が公開会社、かつ大会社で、有価証券報告書の提出義務が課されている場合というのは、典型的には上場会社をいう。そのため、換言すると、上場会社は、社外取締役を置くことが相当でない理由を株主総会において説明できないとき、社外取締役を置かなければならないことになり、上場会社は事実上社外取締役の設置を義務付けられたと評価されている。
多重株主代表訴訟
従前の会社法では、株主が自ら株を保有している会社に代わって、当該会社の役員を訴えることが認められており、これによって、会社役員のミスで会社に損害を与えないような制度が設けられていた。
しかし、親会社に100%株式を保有されている完全子会社等の役員がミスをしたとしても、親会社が子会社役員に対して責任追及をすることは考えにくいため、制度の実効性に問題があると指摘されていた。
この点、改正会社法では、親会社の株主が、直接は会社株を保有していない子会社役員の責任を追及することができるようになった(改正会社法847条の3参照)。これによって、完全子会社等の役員に対する責任追及による監督機能の実効性が上がるのではないかと、期待が高まっている。
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