金融法改正~クラウドファンディングに関して~
2015/01/14 金融法務, 金融商品取引法, 金融・証券・保険
2014年5月23日に国会で改正金商法が成立した。改正法成立から約半年が経過し、施行に向けて準備が進められている中で、中小企業やベンチャー企業への資金流入が期待されている。
今回の法改正の目的は、新規・成長企業へのマネー供給を促す制度整備で、投資型クラウドファンディングの利用促進・新たな非上場株式の取引制度・新規上場に伴う負担軽減などである。本記事では、クラウドファンディング全体について取り上げ、最後に投資型クラウドファンディングについて考えてみる。
クラウドファンディングとは
クラウドファンディングとは、「新規・成長企業と投資家をインターネットサイト上で結びつけ、多数の投資家から少額ずつ資金を集める仕組み」をいう。クラウドファンティングの語源は、群衆(crowd)と資金調達(funding)から作られた造語であり、ソーシャルファンディングと呼ばれることもある。
今回の金融商品取引法改正によって、企業がインターネットを活用して広く資金を募ることが可能となることで、金融商品が取り扱える証券会社の仲介を必要とせずに、多くの事業者が不特定多数の人を対象として資金を集めることが可能になる。
クラウドファンディングのメリット・デメリット
企業側のメリットとしては、第一に資金の集め易さが挙げられる。また株式上場などに比べて、資金調達の難易度は低くなるため、中小企業にとって資金調達の選択肢が広がったと言える。さらに資金を提供した投資家が、その企業の良さを広めてくれる可能性も高いといえる。しかし、不特定多数の資金提供者を管理し、また企業としての重要な意思決定や決算情報などを報告する点に注意をする必要がる。
投資家側のメリットとしては、企業を資金面においてサポートし、成長した際に配当やキャピタルゲインを得る可能性がある。しかし、成長企業への投資であるため、投資家が損失を被るリスクが高いといえ、上場企業の株式と異なり売買する機会が限られているなどのデメリットがある。
クラウドファンディングの種類
クラウドファンディングの種類を大きく分けると、今回の金商法改正の対象となっている投資型、そして、寄付型、購入型の三種類に分けることができる。
(1)投資型に関して
投資型とは、資金提供者が組合契約を締結する等して資金を出資し、これに対して、収益の一部が資金提供者に分配されるものを言う。分配される金銭等が資金提供者へのリターンとなる。
今回の、金融商品取引法改正により利用促進が注目されているのがこのタイプである。
(2)寄付型に関して
資金提供者が資金を寄付として提供し、資金提供者に対してのリターンがないタイプをいう。
(3)購入型に関して
資金提供者は、一定の製品等を購入し、その対価として資金を提供するタイプをいう。購入した製品等が資金提供者へのリターンとなる。
投資型クラウドファンディングについて改正のポイント
上記でクラウドファンディングの種類を3つあげたが、その中で投資型クラウドファンディングに関しては、金商法の適用があることから日本国内においてはあまり運用されていなかった。
しかし、新規企業や成長企業への資金供給を促進を目的として、金商法が改正されたことにより、投資型クラウドファンディングに関しても、企業の参加条件が緩和された。
今回改正された金商法の変更点は以下の通りである。
・ 参入要件の大幅緩和(金商法第 29 条の4の2、第 29 条の4の3、政令)
インターネット経由の少額投資を行う投資型クラウドファンディング業者を特例金商業者と定め、参入規制が大幅に緩和される。
・ 未公開株の勧誘の一部解禁
これまで原則禁止とされてきた一般個人への未公開株の販売勧誘が、インターネット経由の少額投資に限って一部解禁されることになり、これまでできなかった株式型のクラウドファンディングを行うことが可能となる。
・ 投資者保護のためのルールの新設(金商法第 35 条の3、第 43 条の5、第 29 条の4等)
クラウドファンディング業者に対して「ネットを通じた適切な情報提供」や「ベンチャー企業の事業内容のチェック」を義務づける等、投資者保護のための行為規則等が新設される。
今後の課題
今後、投資型クラウドファンディングを運用していくためにはどのような整備が必要か。
規制緩和が行われれば、当該制度を悪用した悪質業者や詐欺グループが横行する可能性や、取引市場の不存在による経済的価値の把握の困難性から、一般消費者に不測の損害が与える可能性がある。
このような事態を回避するためにも、投資型クラウドファンディングの制度の導入にあたっては、投資型クラウドファンディング業者による電話や対面による勧誘の禁止や、投資型クラウドファンディング業者の参入要件について、金融商品取引業者としての専門性の確保、ウェブサイトで提供する情報の適切な確認・調査の体制、システム管理体制等、業態の特性に応じた登録要件の整備、といった制度の整備が今後は必要である。
関連サイト
金融商品取引法等の一部を改正する法律(金融庁)
動き出す「投資型クラウドファンディング」(東洋経済ONLINE)
今、注目が集まる 小口の資金を集める新しい金融手法「クラウドファンディング」(日経産業新聞)
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