ビッグデータの利用はどうなる?個人情報保護法改正原案が明らかに!
2015/02/26 コンプライアンス, 情報セキュリティ, 個人情報保護法, その他
個人情報保護法改正案が明らかに
今月18日、政府が今国会での成立を目指す個人情報保護法改正案の「原案」が明らかになりました。昨年12月に同法改正の「骨子」が示されていましたが、今回の「原案」は、「骨子」に盛り込まれた諸々の改正点につき消費者団体及び経済団体からの批判、そして要望に配慮した内容となっています。
個人情報保護法の改正は、2003年の同法成立以来初めて。今回の改正の狙いは主に、個人情報保護のあり方及びその管理の見直し、及び、ビッグデータの利活用を推し進める安倍政権の成長戦略に沿って、企業が持つ個人情報を利用しやすくすることにあると考えられます。政府は今月18日に原案を自民党内閣部会などの合同会議に示した上、近く改正案を閣議決定し、今国会での法改正を目指します。
以下が、個人情報保護法改正原案の主な内容です。
個人情報保護法改正原案の内容
①個人情報利用目的の変更について
政府は昨年12月に公表した改正案の「骨子」では、匿名化やホームページ上で公表して後から拒否できる仕組みを作ることを条件に、購買履歴などの個人の行動に関する情報(パーソナルデータ)を契約当初の目的以外に利用することを、本人の同意がなくてもできるとしていました。
これに対しては、「本人が気づかないうちに個人のデータを勝手に利用されかねない」という消費者団体からの批判がありました。また、骨子案は海外の個人情報保護規制の基準に適合していないため、情報保護策が「十分である」と認めた国にしかデータの転用を認めない欧州連合(EU)などとの間でデータのやり取りが困難となる懸念も指摘され、今回明らかとなった改正原案では、本人の同意なしで目的外利用ができるという仕組みの導入は撤回されました。
②個人情報の定義について
骨子では、個人情報の定義を、従来の氏名、住所、生年月日に加え、携帯電話番号や旅券番号など「商品の符号」、指紋や顔などの「身体の特徴」にも広げる方針を示していました。しかし、個人情報の定義を広げすぎると、企業が個人情報を活用しづらくなることに配慮し、原案では「特定の個人を識別できるもの」として、新たな個人情報の範囲を指紋データなどに絞りました。
③「データベース提供罪」の新設
昨年7月に発覚したベネッセコーポレーションの顧客情報流出事件を受けて、新たに「データベース提供罪」が設けられます。最高刑は懲役となる見通しで、不正な利益を売る目的で情報提供や、盗用した場合に適用となります。
④個人情報保護委員会の新設
原案では、企業などが入手した個人情報を適切に取り扱っているかどうかをチェックする個人情報保護委員会の設立が盛り込まれました。同委員会には、企業の個人情報の取扱いをチェックするにあたり、企業へ立ち入り検査をする権限が付与されるとしています。
⑤「匿名加工情報」の利用制限緩和
現在の個人情報保護法では、原則として、住所、氏名、年齢などの個人情報は、本人の同意なく第三者に提供することはできません。しかし、原案では、「東京都」「女性」「40代」などと、個人を特定できないようにしたデータを「匿名加工情報」とし、これについては利用制限が緩和されます。
最後に
情報処理技術の大幅な発達により、従来のデータベース管理システムなどでは記録や保管、解析が難しかった巨大なデータ群(=ビッグデータ)の処理・解析が可能となり、それをマーケティングや営業に活用して、新たなビジネスチャンスにしようとする企業が近年増えています。しかし一方、昨年7月に発覚し、マスコミでも大きく報道されたベネッセコーポレーション顧客情報流出事件に代表されるように、企業の顧客/個人情報の管理についての安全性について市民の不安と懸念が広がっているのもまた事実です。
昨年発表された個人情報保護法改正案の骨子から今回の原案公表までの間にも、この「企業の個人情報利用の利便性」と「市民(消費者)の個人情報保護」のバランスを図るために、大きくその内容が変わりました。18日にいったん改正案の原案が公表されましたが、情報処理技術は文字通り日々進歩、そして・変化していくものであり、また、海外の個人情報規制との兼ね合いもあるため、最終的にはいったいどのような内容の改正案が国会に提出されるのか、更なる注視が必要です。
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