改正建築士法の概要
2015/07/10 法改正対応, 法改正, その他
建築士法改正の必要性
改正前の建築士法では、設計等の業務を行う建築士事務所の契約責任が不明確であり、建築紛争が増大・長期化等につながっている。また、建築士の資格を確認する規定がなく、建築士になりすます事案等が発生している。このような問題を改善していくため、建築士法は建築物の設計・工事監理の業務の適正化及び建築主等への情報開示の充実を目的として改正された。
改正建築士法の概要
改正建築士法では、以下の点が変更された。
Ⅰ.書面による契約等による設計等の業の適正化
① 当事者が対等な立場で公正な契約を行う契約の原則を規定化
② 延べ面積300㎡を超える建築物について、書面による契約締結の義務化
③ 延べ面積300㎡を超える建築物について、一括再委託の禁止
④ 国土交通大臣の定める報酬の基準に準拠した契約締結の努力義務化
⑤ 設計業務等に関する損害賠償保険の契約締結の努力義務化
Ⅱ.管理建築士の責務の明確化による設計等の業の適正化
① 管理建築士の責務を下記のとおり明確化
・受託する業務等の選定 ・業務の実施者の選定
・提携先等の選定 ・事務所の技術者の管理
② 建築士事務所の開設者に対する管理建築士が述べる意見の尊重義務化
Ⅲ.免許証の提示等による情報開示の充実
① 建築主からの求めに応じた免許証提示の義務化
② 建築士免許証の記載事項等(定期講習の受講履歴、顔写真)に変更があった場合の書換え規定の明確化
Ⅳ.建築設備に係る業務の適正化
① 法律上に「建築設備士」の名称を規定化
② 建築士が延べ面積2,000㎡を超える建築物の建築設備について建築整備士の意見を聴くことを努力義務化
Ⅴ.その他の改正事項
① 建築士事務所に係る欠格要件及び取消事由に、開設者が暴力団員等であることを追加
② 建築士に対する国土交通大臣・都道府県知事による調査権の新設
③ 建築士事務所の所属建築士を登録事項とし、変更した場合の届出義務化(3ヶ月以内)
建築主となる企業が特に注意する変更点
特に建築主となる企業が注意する変更点として、延べ面積300㎡を超える建築物についての書面による契約締結の義務化があげられる。改正以前は書面によらない契約締結も違法とはならなかったが、今後は延べ面積300㎡を超える建築物につき書面による契約を行わなかった場合には違法となるので、注意が必要である。
契約の書面の記載事項は下記のとおりである。
(1)設計受託契約にあっては、作成する設計図書の種類
(2)工事管理受託契約にあっては、工事と設計図書との照合の方法及び工事
管理の実施の状況に関する報告の方法
(3)当該設計又は工事管理に従事することとなる建築士の氏名及びその者の
建築士の別並びにその者が構造設計一級建築士又は設備設計一級建築士
である場合にあってはその旨
(4)報酬の額及び支払の時期
(5)契約の解除に関する事項
(6)前各号に掲げるもののほか、国土交通省令で定める事項
コメント
今回の建築士法の改正では、建築業務の根幹となる契約締結の際の手続きに変更があった。建築主となる企業においては、違法とならないように手続きの確認が今一度必要である。また、建築主からの求めに応じた免許提示の義務化がなされ、建築主は建築士のなりすましがないか確認することができるようになった。今回の改正で義務化されたのは建築主が免許の提示を求めた場合のみであるため、建築士のなりすましを防止するためには建築主からの働きかけが必要である。建築士のなりすましが発覚した場合、建築主となる企業は責任を問われることになるため、建築士のなりすましを防止することは企業の利益を守ることとなる。今回の改正を機に、建築主となる企業にも建築士のなりすまし防止の一役を担うことが期待される。
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