厚労省「働かせすぎ」企業に対する指導・監督を公表
2015/10/02 労務法務, 労働法全般, その他
厚労省の公表
厚生労働省は先日、平成27年4月から6月までに長時間労働が疑われる2,362の事業場に対し労働基準監督署による調査が実施され、そのうち63%に当たる1,479事業場で違法な時間外労働を確認し、是正・改善に向けて指導監督を行ったことを公表した。
現在、景気回復傾向にあり、業績が良好である企業も少なくないが、依然として長時間労働の問題の多くは解消されていないということだ。
そこで今回は、長時間労働の実態や企業の取り組みについて概観してみたい。
労働時間に関する法的規制
労働時間に関して、労働基準法は以下のように定めている。
①「1週間で40時間」もしくは「1日8時間」を超えて労働させてはならない。
人によっては「残業して当たり前」という認識があるかもしれないが、法律上、1日8時間を超えて労働させてはならないのが原則である。
②1日の労働時間が8時間を超える場合、1時間以上の休憩を与えなければならない。
③1週間のうち最低でも1日は休日を与えなければならない。
④所定の労働時間を超える場合や休日出勤させる場合には、労働者の過半数を占める組合といわゆる36協定を締結し、労働基準監督署に届け出なければならない。
企業の具体的取り組み
(1)まず、残業や休日出勤を抑えて労働時間を削減することが、長時間労働問題に対する最も基本的な事項である。
①下記事項を労働条件通知書や就業規則に明示して制度化
・始業・就業時間を記録し管理する。
・残業する場合には、一定の手続を必要とする。(残業はあくまで例外であるため)
・労働時間の上限を設定する。
・みなし労働の場合、総労働時間を設定する。
・全ての従業員について残業を禁止する就業日を設ける。
・休日出勤に対して代休の取得を義務付ける。
・管理部門に相談窓口を設ける。
②管理部門による役員、管理職や上位職を対象とした研修の実施
・「残業するのは当たり前」という社風や職場風土を変えていく。
・誰がどのような業務を担当しているか社内で可視化し、業務の適正な分配を維持する。
(2)次に、年次有給休暇取得を推進することが挙げられる。残業や休日出勤続きで業務効率が低下したまま働くよりも、有給休暇を利用して心身をリフレッシュさせた方が、結果的に業務効率を上げることができる。
・管理職・上位職にある者が部下に対して積極的に有給休暇を取得することを勧める
・事業年度開始時点で年休取得計画を作成する
その際には、繁忙期を考慮したり、他の従業員と調整する
・半日休暇や中・長期の休暇等、仕事に支障がない程度に弾力的に有給休暇が取得できるようにする。
コメント
近年、労働関係法規改正の大きな流れがあり、今後、担当官庁及び監督署による指導・監督がいっそう強化されることが予想される。また、育児や介護への参加等を理由として働き方の多様性が生まれる中で、就業時間を弾力的に調整したいという従業員のニーズはどこの企業にもあるはずである。
以上、長時間労働の実態や企業の取るべき対策について概観したが、これを機に自らの会社の労働時間の管理について、一度整理してみてはどうだろうか。
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