トクホ、初の許可取消しとその対応
2016/10/11 行政対応, 消費者取引関連法務, 民法・商法, 食料品メーカー
事件の概要
日本サプリメント株式会社が販売する商品6種類が、平成28年9月23日トクホとしての許可を取り消されました。この原因は、上記2つのシリーズに含まれる成分(関与成分)が消費者庁が定める条件を満たしていないためです。同庁は、同月27日トクホに対する検査資料の提出を指示しました。検査データは、2014月4月以降の物を想定されています。トクホとして販売を終了している商品等については、同庁に販売終了している旨を届け出ることを求められています。
トクホについて
トクホとは、食品の有する成分の有効性と安全性について、消費者庁長官の許可を得て特定の成分に適する旨を表示した食品です。上記に該当する食品は、「特定保健用食品の審査取扱い及び指導要領(最終改正 平成28年9月30日)」によって、身体の生理的機能などに影響する成分を含め特定の効果が科学的に証明されている必要があります。以下、今回の問題に関係する特定保健用食品としての要件の一部になります。
1. 食品又は関与成分について、表示しようとする保健の用途に係る科学的根拠が医学的、栄養学的に明らかにされていること。
2. 食品又は関与成分についての適切な摂取量が医学的、栄養学的に設定できるものであること。
3. 食品又は関与成分が、添付資料等からみて安全なものであること。
4. 関与成分について、次の事項が明らかにされていること。ただし、合理的理由がある場合には、この限りではない。
ア 物理学的、化学的及び生物学的性状並びにその試験方法
イ 定性及び定量試験方法
5~8 略
今回の取消し原因としては、2つあります。1つ目は、ペプチドシリーズについては関与成分であるかつお節オリゴペプチドが規定量より少なかったことです。2つ目は、豆鼓シリーズについては豆鼓エキスが含有されていなかったことです。これは特定保健用食品の要件である2関与成分についての適切な摂取量が医学的、栄養学的に設定できていなかったことになります。豆鼓シリーズは、成分が2年以上前に消えています。消費者庁は、これを悪質な行為であると発表しております。
また、トクホの手続としては、消費者庁に申請書を提出します。提出先で申請書及び添付資料の確認を行った後、消費者委員会と食品安全委員会へ意見を求めつつ両委員会において審査を行います。
コメント
トクホは、健康増進法により国民の健康を図ることを目指し作られたものです。トクホの商品は、「特定保健用食品の審査取扱い及び指導要領」に沿って商品の成分を表示する項目が多くなり、厳しい手続きとなります。しかし、平成8年まではトクホの許可には、2年という期限が設けられていました。それが、平成8年に4年に伸びました。そして、なんと翌年には無期限となりました。現在は、永久の許可制度になっています(第3回特定保健用食品等の在り方に関する専門調査会 資料)。トクホの目的からすれば、許可期限が短い程、消費者としては安心出来ると思います。この永久の許可制度は、消費者庁も問題視しており今回の特定保健用食品の許可取消しも許可制度とのバランスをとるためのものかもしれません。
また、消費者庁は「特定保健用食品の審査取扱い及び指導要領」に「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(平成 26 年文部科学省・厚生労働省告示第3号。)に沿って添付資料を作成することを追記しました。消費者庁が、「特定保健用食品の品質管理の徹底」するために加えられたものです。これは、平成28年9月30日、トクホの信頼性と客観性を確保するために加えられたものです。初めての許可取消しとはいえ、消費者庁は特定保健用食品の許可取消しから再検査の要請を5日間という短期間で対応しています。消費者庁が、トクホの成分の不存在について重く見ていると感じられます。加えて、消費者庁は、トクホ全体に対する不信感があるのかもしれません。消費者庁は、豆鼓シリーズの成分消滅を2年以上隠したことを悪質な行為と述べていることからわかります。消費者庁が、トクホの信頼を維持するため、トクホの許可期限を再び設定することも考えられます。今後、トクホについては要件、手続等が変更される可能性があるので、注意が必要だと思います。
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