炎上かリコールか
2016/11/17 危機管理, コンプライアンス, 民法・商法, その他
はじめに
2016年9月10日の産経ニュースによると、米消費者製品安全委員会は、同9日にサムスンのスマートフォン、「ギャラクシーノート7」に爆発の恐れがあるとして利用者に使用と充電の中止を勧告しました。サムスンは既に同機種のリコールを決定しています。
さて、この様な消費者が使用する製品について、安全上の問題からリコールをするという例は国内にも事例があります。また、過去に消費者用製品の事故で被害者が出たこともあります。この様な被害から消費者を守るため罰則のある法律も制定されました。今回は、企業に課される消費者生活用製品安全法上の義務の一部について見ていきたいと思います。
制度の目的
消費生活用製品安全法とは、消費生活用製品による一般消費者の生命又は身体に対する危害を防止し、特定製品の製造販売を規制するとともに、適切な保守を促進し、併せて事故情報の収集、提供による一般消費者の利益を保護するための法律です(法1条参照)。
この法律は、いくつかの消費生活用製品の事故が原因で成立しました。例えばおしゃぶり訴訟という事件では、大手ベビー用品メーカーのおしゃぶりを使用した女児が歯列、顎の変形など深刻な障害が残ったとして女児の母親が、同メーカーに対して1000万円の損害賠償を起こした事件です。この訴訟は既に和解されています。
企業の責任
消費生活用製品の製造又は輸入の事業を行う企業は、死亡、重傷病、火災などの重大製品事故が発生した場合、国に事故報告を実施する義務があります(法35条1項参照)。
この報告を元に国は、第二の重大事故防止のため国民に情報を公表し、必要に応じ当該製品の製造、輸入禁止、回収等を命令することができます。これらの命令に違反した場合、法人の代表者や代理人といった違反者には懲役又は罰金が科せられる場合があります。また、法人自体への罰金も法定されています(58条以下参照)。
用語解説
・「消費生活用製品」とは、主として一般消費者の生活の用に供される製品を言います(法2条1項参照)。
・「製品事故」とは、消費者生活用製品の使用に伴う事故の内、消費者の生命身体への危害が発生した場合か、同製品が破損し、消費者の生命身体への危害が発生する恐れのあるものをいいます。ただし、事故が同製品の欠陥により発生していないことが明らかなものは除きます。(法2条5項参照)。
・「重大製品事故」とは、上記の「製品事故」の内、発生し又は発生するおそれのある危害が重大であるものとして政令に定められたものを言います(法2条6項参照)。
おわりに
昨今は、個人の方でもツイッターなどで情報の拡散ができ、炎上騒ぎも度々見受けられます。リコール問題を隠蔽し会社の信頼失墜に繋がった企業もある一方で、問題を迅速に開示、自主回収を行うことで信頼を保持した企業もあります。適切な報告による消費者被害の最小化こそが結果的には会社の利益にも繋がってくるように考えられます。消費生活用製品安全法には、今回ご紹介しきれなかった危険防止命令や体制整備命令といったものもあります。法務担当の方は、こういった制度を知っておくことで、危機に対して適切な対処が可能となると思われます。
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