コーポレートガバナンス・コード改定への動き
2018/04/03 商事法務
はじめに
金融庁は先月13日、企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)の改定案を発表しました。社外取締役の比率の増加や最高経営責任者(CEO)の選任手続きをわかりやすく明示することが新たに盛り込まれます。今回はコーポレートガバナンス・コードの概要と改正のポイントについて見ていきます。
コーポレートガバナンス・コードとは
コーポレートガバナンス・コードとは2015年6月に金融庁と東京証券取引所がまとめ、公表した上場会社の企業統治に関する指針です。欧米やOECDの基準を参考に策定され、日本企業の国際競争力と金融市場の活性化を目的として作られております。会社法や金商法などとは別に、企業統治のありかた、株主と会社との関係、コンプライアンスへの取り組み方などを示したガイドラインとも言えます。同様のものとして「スチュワードシップ・コード」というものが存在しますが、これは投資家の側に立って、経営陣の適切なチェックを求めた指針と言えます。コーポレートガバナンス・コードは原則として東証に上場している企業全てに遵守が求められております。
コーポレートガバナンス・コードの概要
コーポレートガバナンス・コードは全5章からなり、上場企業として適切な情報開示や株主の扱い、取締役会のあり方などについて定められております。第1章は株主の権利・平等性の確保について規定され、株主の権利行使や株主総会での情報提供、議題について反対票が多かった場合の原因分析と対応などが定められ、特に少数株主や外国人株主の平等性確保が求められております。第2章は株主以外のステークホルダー、すなわち従業員や顧客、債権者、地域社会と中長期的な相互利益を目指した協働が求められております。第3章では会社法、金商法で定められた開示事項以外でも経営指針や財務状況、役員選任指針などを自主的に開示していくべきとしています。第4章では取締役会の株主からの受託者としてのあるべき役割が示されております。そして第5章では企業価値の中長期的な価値向上のため、株主総会以外でも株主との建設的な対話を求めています。
改正案のポイント
今回の改正案で最も大きな点は独立社外取締役の強化です。これまでは上場会社は2名以上独立社外取締役を選任すべきであり、場合によっては自主的な判断で3分の1以上を独立社外取締役とすべきとされておりました。改正案では自主的な判断によりという部分が削除され業種や規模、期間設計等により十分な数を員数を確保すべきとされます。次に取締役会はCEOの選出、または解任について客観性、適時性、透明性のある手続きにより適切に行うべきとしています。また取締役会の構成はジェンダーや国際性、多様性を配慮したものであるべきとしています。つまり女性などの経営へのより積極的な参画を目指しています。
コメント
コーポレートガバナンス・コードは国際社会における日本企業の価値や魅力を増大することを目的として策定されました。その内容は会社法や金商法などで定められている上場企業の有るべき姿をより強化したものと言えます。会社法や金商法といった法令と異なり、それ自体に法的拘束力はありません。しかし東京証券取引所は上場する企業すべてに遵守を求め、それに従わない場合はその理由の説明を求める方針を取っております。違反しても罰則などはなく、また上場廃止につながるといったこともありませんが、投資家や国際市場から見た企業のイメージ、ひいては株価などにも影響を与える可能性はあると言えます。企業統治、コンプライアンス体制の整備において、会社法や金商法、独禁法といった法令だけでなく、コーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードといった指針、ガイドラインなどにも配慮して策定していくことが重要と言えるでしょう。
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