日経新聞 公取委「下請けいじめ」早期解決 自ら是正なら処分せず
2018/10/02 コンプライアンス, 下請法, 独占禁止法
はじめに
公正取引委員会は9月26日、環太平洋経済連携協定(TPP)により各国に義務付けられた「確約手続」を来年初めにも導入する旨発表しました。独禁法等に違反する場合に、公取委による排除措置命令や課徴金納付命令といった法的措置以外のより迅速で柔軟な解決法となることが期待されます。今回は確約手続の概要について見ていきます。
制度導入の背景
昨年11月に大筋合意したTPP11により、各国は独禁法違反の疑いが生じた場合に競争当局と事業者との間の合意で自主的に問題を解決する制度を導入することになりました。できるだけ早期に競争状態を回復することが制度の狙いとされております。違反した事業者は排除措置命令や課徴金納付命令といった公取委による法的措置を回避することができ、また通常の手続よりも迅速に問題を収拾することが期待できます。リニエンシー制度に次ぐ事業者からの自主的な解決手段と言えます。
確約手続のおおまかな流れ
公取委が独禁法違反の疑いがあると考える場合、公正競争を促進する上で必要と判断したときに確約手続に付されることになります。その場合には事業者に①違反事実、②適用法令、③確約計画の認定申請ができる旨が通知されます(48条の2、48条の6)。通知を受けた事業者は公取委との相談等を経てどのように是正していくかの確約計画の認定申請を60日以内に行います(48条の7第1項)。公取委は提出された確約計画が要件を満たしていれば認定し、それにより排除措置命令等の法的措置は免除されます(48条の3第3項、48条の7第3項)。確約計画を提出しなかったり、認定されなかった場合は通常の手続に移行します。また認定されてもその計画内容を履践していない場合も認定が取り消され、同様に通常手続に移行します。
確約手続の対象行為
確約手続の対象行為は私的独占、不当な取引制限、事業者団体の禁止行為、不公正な取引方法、一般集中規制、企業結合規制等あらゆる独禁法上の行為が該当します。しかし例外として入札談合、受注調整、価格カルテルといった反競争性が強い行為や10年以内に同一の違反行為により法的措置を受けていた場合、刑事告発相当の悪質事案の場合は確約手続の対象とならず、通常の法的措置の手続となります。
確約計画と認定
確約計画で策定すべき措置の典型例として公取委は①違反行為の取りやめ、②取引先等への通知または周知、③コンプライアンス体制の整備、④契約変更、⑤事情譲渡等、⑥取引先等に提供させた金銭等の返還、⑦履行状況の報告などを挙げております。また確約計画は競争秩序の回復とその維持の観点から違反事実を排除または排除されたことを確保するために十分なものであることと確実に実施されると見込まれるものであることが認定要件となっております。
コメント
日経新聞電子版によりますと、通常の公取委の手続では調査開始から排除措置命令まで平均で15ヶ月程度かかるとされております。確約手続の導入によりその期間が約半分程度にまで短縮されることも期待できるようです。独禁法違反により排除措置や課徴金が課された場合、企業の損失は大きく、また株主等からの責任追及も予想されます。最初の1社しか全額免除されないリニエンシー制度よりも柔軟で穏当な解決手段と言える今回の制度は企業にとっても公取委にとってもコストとリソース軽減につながるものと言えます。自社に独禁法違反の可能性が発覚した場合にはリニエンシー制度と併せて確約計画の存在も前提として対策を検討していくことが重要と言えるでしょう。
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