大塚家具が無配を発表、剰余金配当について
2018/12/25 商事法務, 会社法
はじめに
大塚家具は21日、当期の剰余金配当を無配とすることを発表しました。業績予想が3期連続の当期純損失となる見通しとのことです。今回は株主にとって大きな関心事である剰余金の配当手続について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、大塚家具は21日、中国家具販売大手の居然之家(北京)と業務提携すると発表しました。同社は「イージーホーム」のブランドで中国全土で店舗を展開しており、大塚家具は同店舗内やインターネット通販で製品を取り扱ってもらう予定とのことです。そして大塚家具では同時に毎年12月に行なっていた年間配当について、「未定」としていた今期の配当を「無配」とした旨発表しました。事業の抜本的な立て直しに時間を要していることなどを理由としております。株主への利益還元を重視していた同社では、1980年の上場以来、無配となるのは初とされます。
剰余金とその配当
株式会社は株主に対し剰余金を配当することができます(会社法453条)。剰余金の計算は会社法446条や会社計算規則等に定められており、非常に複雑なものとなっておりますが、基本的には貸借対照表の純資産の部に計上される「その他資本剰余金」と「その他利益剰余金」となります。そして損益計算書に計上される「当期純利益」が「その他利益剰余金」となります。一般的にはその他資本剰余金は0で、会社の事業によって得た純利益であるその他利益剰余金だけが計上されていることが多いと言えます。以下配当手続を具体的に見ていきます。
配当手続
剰余金を配当する場合はその都度、株主総会の普通決議によって配当事項を決定する必要があります(454条1項)。金銭以外の財産、たとえば子会社の株式などを配当する、いわゆる現物配当の場合で、株主からの金銭配当請求を認めない場合には特別決議が必要となります(454条4項、309条2項10号)。なお会計監査人を置く監査役会設置会社や監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社は取締役の任期が1年の場合、定款で定めることによって取締役会で決定することができます(459条1項)。この剰余金配当は分配可能額が存在する限り、事業年度内に何度でも行うことができます。また剰余金配当の際には、剰余金の最低10%を準備金として積み立てる必要があります。これは準備金(資本準備金、利益準備金の合計)の額が資本金の25%に達するまで義務付けられます(445条4項)。
中間配当とは
上記剰余金配当とは別に、中間配当という制度があります(454条5項)。これは商法の昭和49年改正で年2回あった決算が1回になったことに伴って導入されたものです。事業年度の途中で1回だけ取締役会の決議によって配当を行うことができます。この中間配当の制度を採用する場合も、その旨定款で規定する必要があります。中間配当でもやはり準備金への積立は必要です。
コメント
大塚家具の定款によりますと、事業年度は1月1日から12月31日までで、毎年年度末日に株主名簿に記録された株主に剰余金を配当するとしています。また6月30日を基準日として中間配当を行う旨も定められております。昨年は1株あたり40円の配当がなされたとされますが、今期は当期純損失となることから利益剰余金は無く、配当はできないということになります。以上のように会社法では剰余金の配当について細かな規定が置かれております。また商法や会社法の改正にともない、剰余金配当についても何度も手直しがなされております。剰余金配当は株主や投資家にとっても利益に直結し、重大な関心事となっております。定期的に配当を行い、利益を株主に還元する姿勢は投資家からの評価にもつながります。配当に必要な手続や制度について正確に把握しておくことが重要と言えるでしょう。
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