ドンキが社名変更、商号変更の手続について
2019/02/13 商事法務, 民法・商法, 会社法
はじめに
全国でディスカウントストアを展開する「ドンキホーテホールディングス」は2月1日、社名を「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」に変更しました。創業者で元CEOの安田氏も取締役に選任されております。今回は商号変更の手続と注意点について見ていきます。
事案の概要
旧ドンキホーテの発表によりますと、同社は1月31日に効力発生日を2月1日として商号変更に伴う定款一部変更と安田氏の取締役選任決議を議案とする臨時株主総会を開催しました。新業態の開発と消費者の多様なニーズに応え、また環太平洋地域での発展への決意を込め、それにふさわしい企業のあり方を表すことを目的としているとのことです。同社は「株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」、英文で「Pan Pacific International Holdings Corporation」となります。
商号変更の手続き
商号は定款の絶対的記載事項の一つです(会社法27条2号)。社名、すなわち商号を変更するには定款変更の手続が必要となってきます。定款変更には株主総会の特別決議が必要です(466条、309条2項)。特別決議は議決権の過半数にあたる株主が出席し、そのうちの3分の2の賛成が必要です。定足数は3分の1まで減縮することも可能で、ほとんどの会社では定款でそのように定められていると考えられます。変更の効力が生じた日から2週間以内に本店所在地の管轄登記所で登記する必要があります(915条1項)。その際の登録免許税は3万円となります。
商号変更の際の注意点
商号を決定する際にはいくつか注意点が存在します。まず商号の中にはその会社の種類に応じて「株式会社」「合名会社」「合同会社」等の文言を必ず入れる必要があります(6条2号)。そして商号にはひらがな、カタカナ、漢字、アルファベットとアラビア数字を使用することができます。それ以外の言語やローマ数字などは不可で、記号も「&」「’」「,」「-」「・」「.」以外は使用できません。なお記号は先頭と末尾には使用できません。また同一所在地に同じ商号は登記できません(商業登記法27条)。これは例えば所在地が同じでも◯◯ビル201号と◯◯ビル202号では同一所在地ではなく登記は可能となります。通常このような商号と所在地が同一となることはほぼありえないことからそれほど注意する必要は無いと言えます。
その他の手続き
会社の商号変更を行った場合は上記のように登記する必要がありますが、それ以外にも社名変更を届出を要するところがいくつか存在します。まず自治体や税務署に異動届を提出する必要があります。変更登記を行った後に登記事項証明書を添付して提出することになります。それ以外にも社会保険事務所や銀行など取引先、郵便局や電力会社等に名義変更届けなども必要です。そして法務局に届け出ている会社印の変更も必要となってきます。
コメント
本件で旧ドンキホーテは2月1日をもって株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスとなります。この日から2週間以内にその旨登記する必要があり、各種届出も要することになります。このように一口に社名変更と言っても法律上は商号変更となり、法の規定に基づいて定款変更手続などが必要となってきます。また社名に使える文字や記号などもかなり厳格に規定されております。会社法以外でも既存の他社と混同するような社名は不正競争防止法などに抵触する可能性も有ります。経営再建や会社規模が拡大した際には社名変更を行うことが多いと言えます。社名変更を検討する際にはどのような手続が必要となるか、またどのような社名が可能か、他に類似する社名は存在しないかなどを予め慎重に調査して手続を行っていくことが重要と言えるでしょう。
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