パナソニック子会社の解雇無効訴訟で成立、和解について
2019/04/10 労務法務, 労働法全般
はじめに
パナソニックの子会社の元男性従業員(53)が休職し復職後に解雇されたのは不当であるとして地位確認などを求めていた訴訟で和解が成立していたことがわかりました。同社は3200万円支払い、男性側はすべての訴訟を取り下げるとのことです。今回は和解とその種類について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、パナソニックの子会社「パナソニックアドバンストテクノロジー」(大阪府門真市)に勤めていた男性は2007年、組合活動などを巡り、当時の社長に「殺すぞ」などと暴言を受けていたとされます。男性は適応障害と診断され休職、その後復職するも2013年に解雇されました。男性側は解雇は違法無効であるとして従業員としての地位の確認などを求め大阪地裁に提訴しました。一審大阪地裁は解雇に合理的理由が無いとして解雇を無効とし、未払い賃金分の支払いを会社側に命じていたとのことです。
和解とは
和解とは、当事者が互いに譲歩して争いをやめることを約することによって効力が生じるとされております(民法695条)。その要件は争いについて互いに譲歩し、争いをやめる旨の合意をすることとされ、その効果はひとたび和解が成立したら、真実がその内容と異なっていたとしても合意内容で確定し争えなくなるというものです。つまり和解とは一種の契約で、当事者が和解条項に反する行為を行った場合は契約違反として債務不履行責任が生じることとなります(415条)。和解に関してしばしば問題となるのが錯誤です。たとえば金銭債務の代わりに品物で代物弁済するという内容の和解で、その品物の品質が低く弁済として満足の行くものではなかったといった場合です。判例では和解の内容として争っていなかった点に錯誤がある場合は無効とできるとしています(最判昭和33年6月14日)。対して、和解内容として合意した債権額より実際の債権額のほうが少なかったといった和解内容自体に錯誤があっても無効は主張できないということです(確定効)。
裁判上の和解
民事訴訟の係属中に裁判官の面前で和解を行うことを裁判上の和解と言います。裁判上の和解は上記民法上の和解よりも強い効力を有しております。和解が成立すると裁判所は和解調書という公文書を作成し、この調書は確定判決と同一の効力があるとされており、判決書と同じようにそれに基づいて強制執行ができることになります(民事訴訟法267条)。裁判所は訴訟係属中はいつでも和解を勧めることができ(89条)、当事者に和解の意思はあるものの内容が決まらない場合は裁判所に適当な和解条項を決めてもらうこともできます(265条)。
即決和解
訴えを提起せずに最初から裁判所が間に入って和解を試みる制度が存在します。起訴前和解や即決和解と呼ばれており、訴額にかかわらず簡易裁判所に申し立てることとなります(275条1項)。両当事者が裁判所に出頭し、そこで話し合い和解を行います。和解が成立すればやはり和解調書が作成され、確定判決と同様の効果を有することとなります。和解が成立せずに両当事者が申し立てたときはそのまま訴訟手続きに切り替わります(275条2項3項)。訴えを提起する前にとりあえず簡易迅速な和解を試みるといったことが可能ということです。
コメント
本件でパナソニック子会社は原告男性に3200万円を支払い、男性側は損害賠償請求や国に対する労災認定訴訟を取り下げるという内容で和解が成立しました。これは裁判上の和解なので和解調書が作成され確定判決と同様の拘束力が生じることとなります。一般的に民事訴訟では全体の6割程度が和解により終了していると言われております。勝訴・敗訴といった0か100かで決着をつける判決よりも、たがいに譲り合って争いを終わらせる和解のほうがより穏当でわだかまりも残りにくいと言えます。また上記のように和解にも様々の方法があり民法条の契約として和解を行うことも、より効果的に裁判所を関与させることもできます。取引先や従業員と紛争が生じている場合には積極的に和解を検討してみることも重要と言えるでしょう。
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