まもなく定時総会集中期に突入、株主総会手続きについて
2019/05/21 総会対応, 会社法
はじめに
日産自動車は17日、6月に開催予定の定時株主総会で提案する取締役候補11人を発表しました。今年も間もなく定時株主総会の集中期に突入します。今回は株主総会の手続等を見直していきます。
定時株主総会とは
株式会社は毎事業年度の終了後一定の時期に定時株主総会を招集しなければならないとされております(会社法296条1項)。条文で法定されているわけではありませんが、一般的に事業年度の終了後3ヶ月以内に開催されることとなります。これは議決権を行使できる株主の決定に基準日が設けられている場合は、その権利行使が基準日から3ヶ月以内とされていることと関連します(124条2項)。定時株主総会では事業報告や計算書類の承認、剰余金、定款変更、役員の選任・解任、役員報酬、退職慰労金などについて決議がなされることになります。
株主総会の手続き
(1)招集決定
株主総会の招集決定は取締役会設置会社では取締役会決議で、非設置会社では取締役が決定することとなります(296条3項、4項)。それ以外にも議決権の3%を有する株主も株主総会の招集請求をすることができます(297条1項)。なお公開会社では6ヶ月以上の保有期間が必要です。
(2)招集通知
招集通知は公開会社では株主総会の開催日の2週間前までに、非公開会社では1週間前までに発送することとなります(299条1項)。なお非公開会社でも書面・電子投票を採用している場合は2週間となります。通知方法は取締役会設置会社、または書面・電子投票を採用している場合は書面または電子メールによって通知することになります(同2項)。つまり書面・電子投票を採用せず、取締役会も設置していない小規模な会社では方法に制限はなく、電話や口頭などでも可能です。
(3)開催場所
株主総会の招集場所につきましては特に制限はありません。旧商法では本店の所在地またはその隣接地とされておりましたが(旧233条)、現行会社法では削除されております。ただし従来の開催場所から著しく離れた場所の場合にはその理由が必要となります(会社法施行規則63条2号)。また事実上出席困難な場所で招集した場合は決議取消訴訟の取消事由となることもあります(大阪高裁昭和30年2月24日)。
手続の省略
上記の招集手続きは株主全員の同意がある場合には省略することができます(300条)。これらの手続は株主に出席の機会と準備の猶予を与えることが目的であることから、株主自らが不要としている場合には無理に履践する必要はないということです。また提案された議題について株主全員が書面または電磁的記録によって同意した場合には決議があったものとみなされ、開催すら不要となります(319条1項)。
議事録について
株主総会が終了したら株主総会議事録を作成することになります(318条1項)。一般的には代表取締役が議事録に押印することが多いと言えますが、基本的には条文で定まっているわけではありません。ただし取締役会非設置会社が株主総会で代表取締役を選定した場合には登記手続の関係で議長と出席取締役の押印が必要になってきます(商業登記規則61条6項1号)。
コメント
日産自動車は6月25日に定時株主総会を開催することとなっております。会社法の特別背任の疑いで現在起訴されているゴーン元会長の事件を受けて今期定時総会で指名委員会等設置会社への移行の承認決議を取る予定とされております。多くの株主の参列が予想され、議事進行も紛糾する可能性があると言えます。このように多くの株主を抱える公開会社や上場会社では毎年の株主総会招集は相当重要な行事と言えます。手続に不備があれば株主からの訴訟も有りえます。株主総会の手続は公開会社か非公開会社か、また取締役会を設置しているか否かでも大きく異なります。どのような手続が必要かを自社の種類に合わせて予め確認しておき、手続の省略制度や決議みなし制度なども合わせて利用していくことが重要と言えるでしょう。
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