東芝が取締役会に導入、決議省略の制度について
2019/06/28 商事法務, 会社法
はじめに
東芝は26日、定時株主総会を開催し、取締役全員の同意による決議みなしの制度の導入を決定しました。取締役会の機動的な運営が目的とのことです。今回は株主総会や取締役会での決議の省略制度について見ていきます。
事案の概要
東芝の発表によりますと、26日に開催された定時株主総会では12名の取締役が新たに選任され、そのうち10名が社外取締役というガバナンスの強化を目指した大刷新がなされました。それと同時に第1号議案として、取締役全員の同意の意思表示があれば取締役会を開催せずに取締役会決議があったものとみなすことができる旨の規定を定款に置くことが決議されたとのことです。これにより迅速で機動的な業務の運営が期待できるとされます。
株主総会と取締役会
株主総会での決議が必要である場合、取締役会で招集決定し、2週間前までに招集通知を発送して株主総会を開催し決議を採るという一連の手続が必要となってきます(会社法298条、299条、309条)。取締役会の場合は原則として各取締役が1週間前までに招集通知を発して開催することとなります(366条1項、368条1項)。株主総会の場合は議決権の代理行使や書面投票などが認められますが(310条1項、311条1項)、取締役会ではそれらは認められず実際に出頭して会議に参加する必要があります。このようにいずれの場合も手続には一定の時間と手間がかかります。しかし以下の場合にはこれらの手続を省略して決議があったことにできます。
株主総会の書面決議
株主総会においては、書面または電磁的記録によって議決権を行使することができる株主の全員が同意の意思表示をしたときは株主総会決議があったものとみなすとされております(319条1項)。具体的には取締役または株主から各株主に提案がなされ、それに対し株主全員から同意書が送付されてくることによって決議が成立します。これにより株主総会を実際に開催しなくても決議を採ることができますが、この場合でも株主総会の議事録は作成する必要があります(会社法施行規則72条4項1号)。
取締役会のみなし決議
取締役会においても、取締役が提案をし、それに対して取締役全員が書面または電磁的記録によって同意の意思表示をしたときは取締役会の決議があったものとみなすことができます(370条)。ただしこちらの場合は株主総会の場合と違い、この制度を導入することを予め定款で定める必要があります。またやはりこの場合でも取締役会議事録の作成は必要とされており、決議に伴って商業登記が必要である場合にはこの議事録と定款の添付も必要となってきます。
持ち回り決議
これらの書面によるみなし決議に似たものとして「持ち回り決議」というものがあります。これは取締役が書面により提案して各取締役に回していき、同意、不同意を記載していく決議方法を言います。上記書面決議と違う点は全員の同意は必要なく、過半数の賛成で可決できるという点です。この制度は旧商法下では取締役会非設置会社で行うことが可能でしたが現行法では削除されております。
コメント
本件で東芝は書面によるみなし決議ができる旨の定款変更が承認可決されました。これにより各取締役は書面やメールなどで提案し、取締役全員が同意すると取締役会を実際に開催しなくても決議があったこととできます。このように株主総会や取締役会は一定の要件のもとで簡易な決議方法が認められております。役員が欠けて急遽新たに選任する必要が生じた場合や、短期間でのM&Aなど本来の招集手続きを経て会議を開催している余裕がない場合にはこれらの方法が非常に有用と言えます。また株主が1人ないし数人しかいない小規模会社の場合でも簡便で迅速に決議を採ることができます。会社の規模や議題の内容など、その時々に応じて適切に決議方法を選択していくことが重要と言えるでしょう。
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