弁護士の男に有罪判決、非弁活動について
2019/10/24   コンプライアンス, 弁護士法

はじめに

大阪地裁は19日、弁護士資格を持たない事務員に自身の名義を貸して法律事務をさせていたとして弁護士の古川信博被告(32)に有罪判決を言い渡しました。
自身の印鑑を使わせ債務整理などを行わせていたとのことです。

今回は弁護士法が禁止する非弁活動とその類型を見ていきます。

事案の概要

報道などによりますと、「あゆみ共同法律事務所」に所属する古川被告は同事務所の代表であった弁護士と共謀し、2017年1月頃から経営コンサルタント会社から派遣された事務員に顧客の債務整理などをさせていたとされます。

古川被告は「代表弁護士と意思疎通はしておらず、共謀はしていない」「自分の印鑑を使われているのは知らなかった」などと無罪を主張していたとのことです。

非弁活動とは

弁護士法72条では弁護士の資格を持たない者が法律事務を行うことを禁止しております。

これは資格を持たない者が自己の利益のためにみだりに他人の法律事件に介入することで当事者の利益を損ね法律秩序を害することを防止することを目的としています(最判昭和46年7月14日)。

違反した場合には2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されることとなります(77条3号)。
近年インターネットの普及により弁護士資格をもたない者による法律相談や法律事務の取り扱いが容易となっており非弁活動は増加傾向にあると言われております。
以下要件を具体的に見ていきます。

非弁活動の要件

弁護士法72条によりますと、「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で」「法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない」としています。

「周旋」とは依頼を受けて訴訟事件などの当事者と弁護士との間に介在し両者間の関係成立の便宜を図る行為を言うとされます。
つまり業として弁護士に紹介する行為も違法ということです。
「業とする」とはその行為を反復継続し社会通念上事業の遂行と見ることができる場合を言うとされております。

非弁活動の類型

非弁活動は一般的に弁護士資格を有さない者によって他人の法律事件に関して訴訟活動や和解、示談などが行われることを指しますがそれ以外にも様々な類型が存在します。
たとえば商業用地の確保のために居住者や地権者を強引に立ち退かせる、いわゆる地上げ行為も一種の非弁活動に該当するとされた例があります(最判平成22年7月20日)。

また株主の代わりに株主総会に出席し、弁護士を紹介した上で株式買取価格決定の申立などを委任させた場合も「周旋」にあたるとされました(広島地裁平成18年6月1日)。
なお他人から債権を譲り受け、それを訴訟などで回収する行為も弁護士法72条の潜脱になることから違法とされております(73条)。
債権回収会社はいわゆるサービサーと呼ばれ法務大臣の許可のもとに業務が許されております(債権管理回収特別措置法)。

コメント

本件で大阪地裁は弁護士としての社会的使命を忘れ事務員が印鑑を使うことを容認していたとし、事務員の判断で勝手に和解させられた依頼者もいて違法性は大きいとして懲役1年、執行猶予3年、弁護士法人に300万円の罰金を言い渡しました。

以上のように非弁活動は資格を持たない者が行うだけでなく、業として弁護士に紹介する場合や弁護士が名義や印鑑を貸して法律事務をさせるといった場合も該当します。
近年インターネットにより違法な非弁活動は増加傾向にあるとされており、弁護士会による懲戒処分も後をたたないと言われております。
コンサルタント業務などを行っている場合には弁護士への紹介などを行っていないか、また弁護士ではなく事務員が交渉などを行っていないか確認しておくことが重要と言えるでしょう。

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