東京地裁が携帯番号も開示命令、発信者情報開示手続きについて
2020/01/27 コンプライアンス, 民法・商法
はじめに
インターネットの書き込みにより名誉を傷つけられたとしてプロバイダーに発信者情報の開示を求めていた訴訟で東京地裁は先月11日、発信者の携帯電話番号の開示を命じていたことがわかりました。携帯番号の開示が命じられたのは初めてとのことです。今回は発信者情報開示請求について見直します。
事案の概要
報道などによりますと、東京都内の不動産業者が、不動産情報を扱うネット掲示板に「トップ2人はぶくぶく太っている」などといった書き込みがなされたとしてプロバイダーであるソフトバンクに発信者情報の開示を求めていました。書き込みは携帯電話の番号を使ってやり取りするショートメッセージサービ(SMS)を利用して書き込まれていたとされ、原告の不動産業者側はSMSのアドレスとして携帯番号の開示も求めていたとのことです。ソフトバンク側はSMSに用いる携帯番号は開示請求の対象には該当しないとしています。
インターネット上の誹謗中傷と発信者特定
インターネット上の掲示板などに名誉毀損的な書き込みがなされた場合、発信者に対し不法行為に基づく損害賠償請求を行うことができます(民法709条)。書き込んだ者はこのような民事上の責任だけでなく、名誉毀損罪や業務妨害罪といった刑事上の責任を負う可能性もあります。しかし通常匿名で行われるインターネット上の書き込みの発信者を特定して実際に法的責任を追求することは容易ではありません。そこでまずプロバイダー等に発信者の情報を開示してもらうこととなります。それには任意的に行う方法と、法的に請求するものに分かれます。以下具体的に見ていきます。
プロバイダ責任制限法による請求
プロバイダ責任制限法4条によりますと、①情報の流通により権利が侵害されたことが明らかであり、②発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある場合に限りプロバイダー等に発信者情報の開示を請求することができるとされております。まず被害者側が書き込みによって名誉毀損などの権利侵害を受けていることを立証します。そして書き込みの差止請求や名誉回復のための謝罪広告を請求する、損害賠償の請求をするといった正当な理由がある場合でなければ開示は認められません。発信者の情報開示はそれ自体がプライバシーの侵害や表現の自由を侵害する可能性があることから、このように要件が厳格なものとなっております。そして認められた場合の開示される情報は、①氏名、②住所、③メールアドレス、④IPアドレス、⑤インターネット接続サービス利用者識別番号、⑥SIMカード識別番号、⑦発信時間となっております(総務省令57号)。
その他の方法
法的に発信者の情報開示を求める以外にも、まずプロバイダー等に任意に開示を求めることが考えられます。また弁護士会を通じた照会をかけるといった方法も考えられます(弁護士法23条の2)。これらの任意的な方法では一般的にはほとんどの場合開示に応じてもらえないと言われております。そこでアクセスログ等を最低限保存することを求めることが考えられます。通常、訴訟で請求する場合相当の時間がかかることからその間にアクセスログ等は消去されてしまう可能性が高いからです。発信者情報の開示と違い保存要請は比較的任意に応じてもらえる可能性が高いと言えます。
コメント
本件で東京地裁は、「トップ2人はぶくぶくと太っている」などといった書き込みは名誉を傷つけるものとしました。そしてSMSに用いる携帯番号もメールアドレスに該当するとして開示を命じました。上記のように総務省令では携帯番号は開示情報に含まれておりませんが、SMSの場合は実質的にメールアドレスと同価値なものと判断されたものと考えられます。これにより民事上の請求がより行いやすくなるものと思われます。以上のように一定の要件のもと、名誉毀損的な書き込みについては発信者情報の開示を受けることができます。実際にはプロバイダに対してアクセスログ等の消去禁止の仮処分、発信者情報開示の仮処分などを予め申し立てていくことが一般的です。悪意ある書き込みや誹謗中傷の際にはどのような対応ができるのかを予め把握しておくことが重要と言えるでしょう。
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