東芝取締役会議長が退任へ、株主総会決議要件について
2021/07/01 商事法務, 総会対応, 会社法, その他
はじめに
東芝は25日の定時株主総会で前取締役会議長であった永山治氏の取締役再任案が否決された旨の臨時報告書を開示しました。反対票比率は56.06%だったとのことです。今回は株主総会での決議要件について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、今月25日に開催された東芝第182期定時株主総会では取締役として綱川智氏、永山治氏、小林伸行氏ら11名の選任議案が上程されました。議決権を有する株主数は228,527人で議決権数は4,518,649個とされます。また同社では定足数を議決権の3分の1以上を有する株主の出席としております。
本決議では綱川智氏は賛成割合77.39%で可決しましたが、永山治氏、小林伸行氏に関しては反対割合はそれぞれ56.06%、74.36%で否決されております。なお小林伸行氏は監査委員でもあったとのことです。
株主総会の決議
株主総会の決議には普通決議、特別決議、特殊決議が存在します。普通決議は議決権を行使することができる株主の議決権の過半数が出席し(定足数)、出席した株主の議決権の過半数の賛成で可決となります(会社法309条1項)。この定足数は定款で加重・軽減、または排除することも可能ですが役員の選解任に関しては3分の1までしか軽減することができません。そして決議要件も定款で過半数よりもさらに加重することはできますが、軽減することはできないとされます。また可否同数の場合は議長が決するとの定めは無効とされております。
特別決議は定足数は普通決議と同様ですが、決議要件が出席株主の議決権の3分の2以上の賛成となっております。こちらも定款で変更が可能ですが、定足数は3分の1より軽減はできません。
そして特殊決議には定足数はなく、議決権を行使できる株主の半数以上でかつ、議決権の3分の2以上の賛成となっております。
それぞれの決議を要する場合
通常の株主総会決議や役員の選任・解任には普通決議となります(309条1項)。
特別決議を要する場合は定款変更を要する場合、第三者割当増資での有利発行、事業譲渡、組織変更、合併等の組織再編の場合とされております(309条2項各号)。
特殊決議が必要な例としては、株式に譲渡制限を設ける定款変更をして非公開会社となる場合、公開会社が組織再編をしてその対価として株主に譲渡制限株式を交付する場合などが挙げられます(309条3項1号~3号)。特殊決議は決議要件だけでなく頭数での賛成も要求されていることから、少数株主の保護も図られております。
その他の決議要件
上記株主総会決議以外にも特殊な決議要件が規定されている場合があります。
まず会社設立段階での創立総会の決議は議決権を行使することができる株主の議決権の過半数かつ出席株主の議決権の3分の2以上の賛成となっております(73条)。これは特殊決議での頭数要件とは違い、あくまで議決権の過半数を要求している点が異なっております。
そして特例有限会社でも一部特殊な扱いがなされております。特例有限会社では、特別決議は総株主の半数以上かつ議決権の4分の3以上の賛成を要します(整備法14条3項)。株式会社の特別決議よりもかなり厳しい要件となっております。
コメント
今回の東芝の定時株主総会では11人の取締役候補の選任議案が上程され決議が取られました。前取締役会議長であった永山氏と監査委員であった小林氏以外は賛成多数で可決しております。昨年の同社株主総会での議決権行使妨害の件で「問題なし」と評価していた監査委員のメンバーであったことが影響していると言われております。
以上のように役員選解任については普通決議でよいとされております。多くの会社でもなされているように同社でも定款で定足数は最低人数まで削減されております。なお監査役や累積投票によって選任された取締役の解任には特別決議を要する点は注意が必要です。どのような場合にどのような決議要件が要求されているかを正確に把握しておくことが重要と言えるでしょう。
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