8月から施行、改正薬機法について
2021/07/22 広告法務, 薬機法, その他
はじめに
今年8月1日から改正薬機法が施行となり、新たに課徴金制度が導入されることとなります。医薬品や医薬部外品等の販売に際して虚偽や誇大広告を行った場合には売上高の4.5%の課徴金納付が命じられます。今回は改正薬機法の概要を見ていきます。
改正の経緯
近年インターネット上などであらゆる商品について誇大な広告が問題となっております。医薬品や医薬部外品等についてもこのようなケースがあとを絶たず、最近の例では免疫力強化や除菌効果で新型コロナウイルスの感染を予防するなどと誇張した効果を標榜する広告がなされた例が挙げられます。
景表法では優良誤認表示に対しては措置命令といった行政処分の他に課徴金納付命令が規定されておりますが、薬機法では罰金が規定されているだけで課徴金のような制度はありませんでした。この点につき違法行為によって得た不当な利益を剥奪する制度を設けるべきとの声がかねてより上がっており、欧米でも売上を算定の基礎とする制裁金等の制度が導入されております。
そこで今回の改正では新たに課徴金納付制度が新設されることとなりました。
薬機法による規制
薬機法66条1項によりますと、何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等について、名称、製造方法、効能、効果、性能に関して、明示的であると暗示的とを問わず、虚偽または誇大な記事を広告し、記述し、または流布してはならないとされております。
また医薬品等として認証を受けていないものについても効果効能を広告することは禁止されております(68条)。虚偽のデータに基づく誇大な効能や、認証を受けていない、いわゆる健康食品を医薬品等のように効能を広告することは違法となります。
また厚労省のガイドライン(医薬品等適正広告基準)によりますと、たとえ事実であったとしても医師等の推薦や公認を受けているといった広告も禁止されます。
違反した場合
これら薬機法の規定に違反する広告等を行った場合、厚生労働大臣または都道府県知事はそれらの行為の中止や再発防止、その他公衆衛生上の危険の発生を防止するために必要な措置を命じることができます(72条の5)。また罰則として2年以下の懲役、200万円以下の罰金またはこれらの併科が規定されており(85条4号)、法人に対しても両罰規定が置かれております(90条)。
課徴金制度の導入
今回の改正法施行により、8月1日から課徴金制度が導入されます(75条の5の2)。対象となる行為は、医薬品、医療機器等の名称、製造方法、効能、効果または性能に関する虚偽・誇大広告(66条)で、課長金額は違反行為を行っていた期間中における対象商品の売上額に4.5%を掛けた額となります。算定した額が225万円に満たない場合は免除となります。
同一事案について景表法違反による課徴金納付命令を受けた場合は売上額に3%を掛けた額が控除されます。また独禁法や景表法と同様にリーニエンシー制度があり、違法事実が発覚する前に違反者が自主的に報告した場合は50%が減免されることとなります(75条の5の4)。なお違反行為をやめた日から5年が経過しても除斥期間により賦課されなくなります(75条の5の5第7項)。
コメント
以上のように今回の改正法施行で医薬品や医薬部外品、または効能効果をうたった健康食品等についても虚偽・誇大広告により課徴金が課されることとなります。これまでこれらについては刑事事件として立件されなければ罰金等のペナルティを課すことができませんでしたが、8月1日からは景表法違反と同様に違法な行為による利益が剥奪されることとなります。
昨今問題とされている「コロナウイルス予防に効果的」「免疫力を上げてコロナ対策」といった広告だけでなく、「がんに効く」「動脈硬化を防ぐ」「血圧の気になる方に」といった医薬的効能を健康食品などの広告に使用することは、トクホなど特に認められている場合を除いて特に注意が必要となります。
これらの製品を製造・販売している場合、またはそのような広告を受託している場合は今一度、自社の広告を見直しておくことが重要と言えるでしょう。
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