車いす乗車拒否で処分、UDタクシーとは
2021/08/19 業法対応, 民法・商法, その他
はじめに
車いすで利用できるユニバーサルデザイン(UD)タクシーが乗車を拒否したとして国交省中部運輸局が愛知県内のタクシー会社に行政処分を行っていたことがわかりました。
処分内容は車両の使用停止30日とのことです。今回はユニバーサルデザインタクシーについて見ていきます。
事案の概要
読売新聞によりますと、昨年8月、愛知県豊田市でUDタクシーを運営する「名鉄東部交通」のタクシーが県内の駅で電動車いす利用者の利用を断ったとされます。同社は運転手が電動車いすは乗せられないと誤認していたとし、教育を徹底したとのことです。
またUDタクシーを巡っては、青森市と広島市のタクシー会社が車いす利用者にそれぞれ介助名目で300円と1000円の追加料金を設定していたとして管轄運輸支局から撤回するよう指導がなされていたとされます。
UDタクシーとは
ユニバーサルデザイン(UD)タクシーとは、健常者だけでなく、高齢者や車いす使用者、ベビーカー使用の親子連れ、妊娠中などでも利用しやすい車両のタクシーを言うとされます。
UDタクシーを運営するタクシー会社で予約して利用するだけでなく、街中で呼び止めて利用することもでき、運賃も一般タクシーと同じです。
UDタクシーは足腰が弱っている高齢者や妊産婦、車いす利用者も利用しやすいようにスライドドアに連動するステップを装備し、ゆったりとした空間を確保して、後部には車いす等を収納できるスペースを確保した車両となっております。
優れたUDタクシー車両については国交省による認定制度が用意されており、認定を受けると等級に応じたUDタクシーマークを表示することができます。
道路運送法による運送引受義務
道路運送法13条によりますと、一般旅客自動車運送事業者は、
・運送の申込みが認可を受けた運送約款によらないものである場合
・運送に適する設備がない場合 ・利用客から特別な負担をもとめられた場合 ・運送が法令や公序良俗に反する場合 ・天災その他やむを得ない事由がある場合 ・国交省令で定める正当な事由がある場合 |
国交省令の正当な事由とは、利用客が制止や指示に従わない場合、危険物等を携帯している場合、泥酔していたり不潔な服装をしており他の旅客の迷惑になる場合、付添人を伴わない重病者、感染症予防法に定める感染症に感染している所見がある場合などとされます(旅客自動車運送事業運輸規則)。
そして国交省通達によりますと、UDタクシーであるにもかかわらず、利用客に乗降の可否の説明等をせず利用拒絶することや、設備の操作方法がわからないことを理由としたり、乗降に時間がかかることなどを理由とする利用拒絶は正当事由に該当しないとされます。
公衆の利便阻害行為の禁止
道路運送法30条によりますと、一般旅客自動車運送業者は旅客に対し、不当な運送条件によることを求めたり、その他公衆の利便を阻害する行為をしてはならないとされております(1項)。
また自動車運送事業の健全な発達を阻害するような競争をすることや、特定の旅客に対し不当な差別的取り扱いをすることが禁止されております(2項、3項)。
これらに違反する場合は、国交大臣は事業者に対して、事業計画の変更、運賃等の上限変更、運賃または料金の変更、自動車その他運送施設の改善、円滑な運送確保措置、損害賠償のための保険契約締結などを命じることができます(31条)。
コメント
本件で名鉄東部交通のタクシー運転手は電動車いすは利用できないと誤解し乗車を断ったとされます。
通達によりますと、UDタクシーである場合、電動車いすに関しては重量や幅など乗降の可否の判断に必要な情報について確認や説明をせずに、単に電動車いすであることのみを理由とする拒否はできないとされております。
また車いすであることを理由に追加料金を設定することも不当な差別的取り扱いに当たるとされます。
以上のようにユニバーサルデザインタクシーは車いす利用者や高齢者などでも一般タクシーと同じ料金で同じように利用できることが趣旨となっております。UDタクシーの導入に際しては一般タクシーとどのような点が異なるか、どのような措置が必要かを正確に把握して周知・教育することが重要と言えるでしょう。
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