漫画・アニメへの法規制~あなたはどう考えますか?~
2010/12/15 法改正対応, 民法・商法, 法改正, エンターテイメント
【記事】
今月15日、ついに、あの東京都青少年健全育成条例が可決された。今後、漫画やアニメ、ゲームなどの業界に大きな影響を与えることが予想される。条例の可決を機に、さらなる表現に対する議論が大きくクローズアップされることだろう。
【今回の問題点】
今年の3月に出された改正案では、「非実在青少年」という、内容が不明確な概念で規制を行おうとしていた。
そこで、今回は、前回の批判を受けて概念を明確にしているとしている。
しかし、今回は、前回と異なり年齢についての縛りがなくなり、より広範な規制が可能になったと言えるのではないだろうか。
さらに、刑罰法規としているが、漫画やアニメの設定は架空のものであるから、そもそも架空の世界での行為に現実の法規を適用することに違和感はないのだろうか。架空の設定には、その設定に従ったルールも存在する。
現在、業界側では自主規制も行われている。今回のように、法規をもって規制する必要性が本当にあったのか。それほどの害悪が明白に生じているようには感じられないし、犯罪の可能性を強調すれば、あらゆることが、規制の対象になってしまわないだろうか。
本来、表現行為は、憲法21条1項で保障されている人権であるが、一般的に優越的な人権価値を持っていると言われている。法律的な解釈問題としても、今回の改正条例は議論を呼びそうである。
【検討】
今回の改正の背景には、漫画やアニメが青少年に悪影響を与えることにあると言える。
しかし、それは裏を返せば、それだけ漫画やアニメが思春期の子供たちを惹き付ける何かがあると言えないだろうか。
漫画やアニメが、世界にも誇れるだけの日本の文化として認知されるようになったのも、作品に込められた想いが、人として共通する魅力があると私は考えている。
それは、希望といったプラスのものもあれば、絶望というようなマイナスのものもある。
光り輝く正の経験を積んだ人生も良いと思うが、絶望や挫折の経験を積んだ負の人生も、魅力的な人生ではないだろうか。
情報化社会において、大人が保護してあげることも必要なのかもしれない。
ただ、自分で判断する力も、これからの時代を自律的に生きていくためには必要であるともいえる。法をもって規制していくことが本当に必要であるかは、もっと議論していくべきであったのではないか。
今現在、NHK教育において、「バクマン。」(週刊少年ジャンプ連載)というアニメが放送されている。
この作品では、思春期の少年たちが、本気で漫画家になるための夢を追っている。
漫画やアニメを作っていく側の想いの原点が感じられる。
悪影響を与える作品だけが規制の対象とするが、自由な発想で作品を創っていく時に、その基準は結果論になってしまわないだろうか。
【今後の動向】
そんな中で、大手出版社などが、東京国際アニメフェアへの参加の取り止めを呼びかけている。
東京国際アニメフェアは、毎年3月末頃に東京ビッグサイトで開催されるアニメ業界最大のイベントである。このような大きなイベントに対しても大きな影響を与えており、今回の条例については、まだまだ検討をしていくことが必要となる。
また、今月末には、コミックマーケットが開催されるが、ここでも、早速、今回の条例についての意見が多く取り上げられることが予想される。
漫画やアニメは、今や世界に誇れる日本の文化の1つである。そのクオリティを下げてしまわないかが、今後、懸念されるところである。
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- 松田 康隆弁護士
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