大阪高裁が企業間ポイント交換の課税を否定、消費税の課税要件について
2021/10/20 税務法務, 消費者取引関連法務, 租税法
はじめに
企業が発行したポイントを、利用者が他社のポイントと交換する際に消費税が課税されたことに対し、発行事業者が取り消しを求めていた訴訟で、大阪高裁は課税対象に該当しないと判断しました。消費税に関するこのような訴訟は全国初とのことです。今回は消費税の課税要件について見ていきます。
事案の概要
時事通信によりますと、大阪市にある交通系ICカード「PiTaPa(ピタパ)」のポイントを利用者が他の提携会社のポイントに交換する際に運営事業者に消費税が課税されたとされます。ピタパは鉄道などを利用するとポイントが貯まり、1ヶ月分の料金を後払いする際に割り引かれる仕組みとなっており、航空会社のマイルなど提携する11法人の別のポイントと交換できるとのことです。利用者が交換を申請すると、希望する事業者のポイントが利用者に付与され、提携する事業者が10ポイントあたり1円の資金を代わりに支払うとされます。原告側は事業者間のポイント還元のための実費に過ぎず利益ではないと反論しておりました。
消費税とは
消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して広く公平に課税される税で、消費者が負担し事業者が納付するものを言うとされます。消費税は広く課税されますが、生産、流通などの各取引段階で二重三重に課税されることがないよう、税が累積しない仕組みが採られており、商品などの価格に上乗せされた消費税は最終的に消費者が負担するようになっております。消費税が課税される場合は同時に地方消費税も課税されることとなります。所得税などが直接税と呼ばれるのに対し、消費税のように納税者と実質的負担者が異なる税を間接税と呼ばれます。
課税の対象
消費税法4条によりますと、消費税の課税対象は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡、貸付および役務の提供とされております。(1)国内取引であること、(2)事業者が事業として行うものであること、(3)対価を得ておこなうものであること、(4)資産の譲渡、資産の貸付、役務の提供であることの4つの要件に分けられます。まず国内取引については、資産の譲渡等の際に、その資産が国内に所在すれば国内取引となります。事業として行うとは、対価を得て反復継続し独立して資産の譲渡等を行うことを言うとされます。そして対価を得て行うとは、資産の譲渡等に対して反対給付を受ける場合を言うとされております。寄付金や補助金などは一般的に対価性は無く、課税対象とはならないとされます。
課税に不服がある場合
税務署の課税処分に不服がある場合は、当該税務署長等に対して再調査請求をすることができます。請求を受けた税務署長等は処分の是非を調査・審理してその結果を納税者に通知します。再調査請求は課税処分の通知を受けた日の翌日から3ヶ月以内にする必要があります。この再調査請求を経ずに国税不服審判所長に審査請求をすることもできます。再調査請求を経ない場合は課税処分の通知の日の翌日から3ヶ月以内に、再調査請求を経る場合は再調査決定書謄本を受けた日の翌日から1ヶ月以内となります。そして審査請求の結果に不服がある場合は裁判所に取消訴訟を提起することができます。取消訴訟は裁決の通知を受けた日の翌日から6ヶ月以内となります。
コメント
本件ではピタパの提携事業者に利用者がポイント交換を申請し、利用者にピタパのポイントが交付され、提携事業者がピタパの運営事業者にポイント分の資金を支払ったとされます。税務署側はこれを対価とみなし消費税を課税しました。大阪高裁は提携業者から受け取るのはポイント同等の金額のみで手数料などの報酬が発生しないことから、ポイント還元の原資にすぎないとし、無償取引に該当するとして課税対象とはならないと判断しました。
以上のように消費税として課税されるためには対価を得て行う国内取引である必要があります。本件のように事業者間で相互にポイント分の交換をするだけの場合は該当しないと示されたことは画期的と言えます。どのような場合に課税されるかを今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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