コロナで挙式中止 キャンセル料返還認めず
2021/10/22 契約法務, 民法・商法, その他
はじめに
去年3月に結婚式を中止した男性が式場に対しキャンセル料の約485万円の返還を求めた訴訟で、東京地裁は「挙式が不可能だったとまではいえない」としてキャンセル料を払う必要があると判断し、請求を棄却する判決を言い渡しました。
事案の概要
判決によると、男性は昨年3月までに計約615万円を前払いしていましたが、感染拡大で欠席の連絡が相次ぐ等の事情により男性は式場に対して解約を依頼しました。式場側はキャンセル料約485万円を差し引いた金額のみを男性に対し返還しました。原告は、コロナのまん延を受けての中止は契約上で全額返金が認められた「不可抗力」に当たるとし、全額返還すべきと主張していました。原告の主張に対し、裁判長は、「政府と東京都がイベント開催や飲食を伴う会合の自粛を求める中、挙式を躊躇したのは理解できる」としたものの、「会場は天井が非常に高い聖堂などで、『3密』を回避しての開催は可能だった。不可抗力での中止ではない」と結論づけました。コロナの影響により、結婚式のキャンセル料をめぐってトラブルが相次いでおり、東京地裁ではほかにも裁判が行われています。
不可抗力免責条項について
ビジネスにおいて契約書を交わす場面で、不可抗力条項を目にしたことがあるかと思います。不可抗力免責条項とは、契約上予定された商品やサービスを提供できなくなった場合に、一定の事由があれば、提供できないという債務不履行に基づく損害賠償責任を負わずに済む特約のことをいいます。不可抗力免責条項を語る上で債務不履行に基づく損害賠償責任を負うことが前提となりますが、同責任は、①債務の不履行、②債務不履行と損害の因果関係、③損害、④債務者に帰責事由があれば認められます。そして、債務不履行責任がみとめられたとしても、不可抗力免責条項の解釈・適用が問題となることがあります。本件はまさに、免責条項に記載された「不可抗力」に、コロナ流行を理由とする結婚式の不開催が該当するかが問題となりました。
不可抗力該当性
本判決をもってコロナウイルスを理由とするすべての結婚式のキャンセルが「不可抗力」に該当しないとはいえません。なぜなら、本判決をみるに、コロナウイルスに感染するリスクが低い形で結婚式を行うことは可能であったとの判断が下されていることから、いかなる対策をするにしても式場でコロナウイルスの感染を十分に予防できない程の人数を呼ぶ場合等には「不可抗力」に該当する可能性があるといえるからです。また、本判決と全く同様のケースであっても、原告が控訴をするつもりと述べていたことから、控訴審で結論がかわることもありえます。そのため、不可抗力免責条項について、コロナウイルスの感染予防を理由とするキャンセル等が一概に「不可抗力」に該当しないとは言えません。
コメント
企業法務従事者としては、不可抗力免責条項がどのような事案で適用を受けるのか、判例の解釈はどのような変遷があるのか等、一通りの理解をしておくと有事の際に迅速に対応できてよいかもしれません。
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