エデュラボがマザーズに降格、東証の上場廃止基準について
2022/02/09 商事法務, 上場準備, 会社法
はじめに
上場前からの不正会計の発覚により、東京証券取引所がEdulab(エデュラボ)を一部からマザーズに降格処分にしていたことがわかりました。東証による降格処分は2例目とのことです。今回は東証の上場廃止基準等について見ていきます。
事案の概要
日経新聞の報道によりますと、2018年に東証マザーズに上場したエデュラボは上場前から連結範囲を意図的に調整していた疑いが発覚したとされます。また上場時や2020年の東証一部への移行時に虚偽の決算情報を元に公募増資をしていたとのことです。これを受け東証は先月11日、同社を東証一部からマザーズへの降格処分としました。同社へは現在も特別調査委員会の調査が続いており、特設注意市場銘柄への指定を含む追加的な措置を講じる可能性もあるとされております。特設注意市場銘柄に指定され、その後改善が見られない場合は上場廃止となるとのことです。
東証の上場廃止基準
東京証券取引所ではそれぞれの株式市場で上場廃止となる基準が定められております。東証一部と二部の基準としては、株主数が400人未満、流通株式数が2000単位未満、流通株式時価総額が5億円未満、債務超過、最近1年間の月平均売買高が10単位未満、有価証券報告書等の提出遅延、有価証券報告書等への虚偽記載、特設注意市場銘柄に指定され内部管理体制等の改善見込みがない場合、宣誓事項違反等の上場契約違反、その他倒産や銀行取引停止などが挙げられております。それ以外にも非公開会社化や他の会社の完全子会社となった場合、全部取得条項月種類株式の全部取得、反社会的勢力の関与なども上場廃止原因となります。
市場変更基準
東証ではそれぞれの市場から一部や二部に変更する場合の基準も設定されております。特に例が多いマザーズから一部への市場変更基準を見ていきます。まず形式要件として、株主数が800人以上、流通株式数2万単位以上、流通株式時価総額100億円以上、時価総額250億円以上、取締役会設置から3年以上、連結純資産額50億円以上、最近2年間の利益が25億円以上または最近1年間の売上が100億円以上、最近2年間有価証券報告書に虚偽記載等が無いこと、単元株式数が100株となる見込み、組織再編によって消滅会社となる見込み等が無いことなどが挙げられております。その上で企業の継続性や収益性、健全性、コーポレートガバナンスおよび内部体制、企業内容の開示の適正性などが審査されます。
東証の市場再編
東証の株式市場は今年4月4日から再編され、現在の東証一部、東証二部、JASDAQ、マザーズから、プライム、スタンダード、グロースの3つの市場区分に変更となります。東証一部上場企業が増えすぎて、質の低下を招いたことが背景にあると言われております。今回の再編に伴い、流通株式数の算定方法が変更になります。現在では上場株式数から主要株主と役員が所有する株式と自己株式を控除したものが流通株式数となりますが、再編後はさらに国内の金融機関や保険会社その他固定的と認める株式も控除されます。つまり持ち合い株や政策保有株も非流通株式となります。このため流通株式時価総額を満たすことが現在よりも厳しくなると言えます。
コメント
本件でエデュラボは連結範囲の意図的な調整や決算情報、市場変更申請の際の書面等に虚偽記載があったとされます。これらは市場変更基準の形式要件に抵触するとともに上場廃止基準にも該当するものと言えます。同社は2020年に東証一部に移行しておりましたが、マザーズへの降格となり現在も調査中となっております。以上のように東証での上場や、より上位市場への移行はかなり厳格な基準が設けられております。今年4月からの市場再編後も同様に上場維持には多くのコストを要するものと予想されます。証券市場への上場は公募増資が容易になることや、ガバナンス体制の強化・透明化、企業イメージの強化などメリットも多い反面、コストの増加や株主への対応、敵対的買収の危険などデメリットも多いと言えます。上場を検討している場合はこれらの点も踏まえて、自社に合ったプランを模索していくことが重要と言えるでしょう。
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