新生銀行が社名変更を検討、商号変更手続きについて
2022/03/02 商事法務, 会社法
はじめに
SBIホールディングスの北尾社長は先月28日、昨年に子会社化した新生銀行の社名変更を検討していることを明らかにしました。6月の株主総会で議案を提出する予定とのことです。今回は会社の商号変更手続きについて見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、SBIホールディングスは昨年12月に株式公開買付を行い、株式保有比率を48%近くまで増やして連結子会社化したとされます。SBIの北尾社長は先月28日、新生銀行について普遍的な価値観を共有し、意識改革を図る上でも社名変更が必要として社名変更を検討していると発表しました。また前身である旧長銀時代に投入された公的資金約3490億円の返済についても海外ビジネスの強化やデジタル化した金融商品の販売等を通してグループ全体のシナジーを追求し、道筋をつけるとのことです。社名変更については今年6月の定時株主総会に諮る予定とされております。
商号変更の手続き
会社の商号変更の手続きとしてはまず株主総会の特別決議が必要となってきます(会社法466条、309条2項11号)。商号は定款の絶対的記載事項であることから商号を変更するには必然的に定款変更が必要となってくるからです。株主総会の特別決議は議決権を行使することができる株主の議決権の過半数が出席し、そのうちの3分の2以上の賛成を必要とします。この定足数については定款で3分の1まで軽減させることも可能です(309条2項)。また株主総会決議は書面または電磁的記録によって、議決権を行使できる全ての株主の同意があれば決議があったとみなされることとなります(319条1項)。この場合でも商号変更登記の申請に際しては株主総会議事録を作成して提出する必要があります。なお会社が銀行等一定の組織である場合は特別法により主務大臣の認可を受ける必要があります(銀行法6条3項等)。そして商号を変更した日から2週間以内に登記をすることとなります(会社法915条1項)。この際の登録免許税は3万円となっております。
商号のルール
商号には日本語の漢字、ひらがな、カタカナの他にローマ字その他の符号が使用できます。以前はローマ字などは使用できませんでしたが、平成14年商業登記規則の改正により使用できるようになりました。使用できる符号は「&」「’」「,」「-」「.」「・」となっております。商号中には会社の種類に合わせて「株式会社」「合名会社」「合資会社」「合同会社」などの文字を入れる必要があります。他の種類の会社と誤認させるような文字は使用できません(会社法6条3号)。また銀行以外の会社が商号中に銀行である旨の表示はできず、「株式会社バンク」といった表示はできませんが、「株式会社データバンク」は可能と言われております。会社が外国会社である場合は(銀行)といったように会社の業種を商号の末尾に表示することも可能となっております。
商号に関する規制
既に登記されている商号と本店所在地が同一である場合は登記することができないとされております。以前は同一市町村内で同一の営業を行うために他人が登記したものと区別できない紛らわしい商号の登記は禁止されておりましたが現在ではその規制は廃止されております。そのため本店所在地が同一でなければ既に登記されている商号とまったく同じ商号で登記することも形式的には可能と言えます。ただし不正の目的をもって他の会社と誤認されるおそれのある名称または商号を使用することは禁止されます(会社法8条1項)。この場合、営業上の利益を侵害され、または侵害されるおそれのある会社はその侵害の差し止めを求めることも可能です(同2項)。
コメント
本件でSBIホールディングスの北尾社長は新生銀行の社名を変更する意向を示しております。どのような社名となるかは現時点では不明ですが、同社は銀行であることから定款変更の株主総会決議の他に金融庁の認可が必要となります。6月の定時総会での承認決議を経て認可申請手続きが進められる見通しです。以上のように社名を変更するには定款変更が必要となります。また商号の決定に際しても一定のルールがありどのような社名でも可能というわけではありません。既に存在している他社と混同するおそれのある社名に変更することも規制に抵触する可能性があり注意が必要と言えます。これらの点に留意しつつ、社名変更の際には早めに手続きを確認して進めていくことが重要と言えるでしょう。
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