レオパレス21、入居率嵩増し報道に対し週刊新潮への法的措置を準備
2022/10/28 コンプライアンス, 刑事法
はじめに
株式会社レオパレス(東証プライム上場)は2022年10月21日、20日発刊の週刊新潮において、入居率嵩増し等に関する事実無根の報道がなされたことが名誉棄損を構成するとして、訴訟の提起に向けた準備を開始した旨発表しました。本記事では、レオパレスと週刊新潮との紛争に関し、ご紹介します。
両社の主張の比較
週刊新潮の報道内容
週刊新潮の報道では、レオパレス幹部社員からの内部告発という構成で、「レオパレスが入居率嵩増しを行っており、その手口として審査不合格者の入居、家賃滞納者の居座りを容認するなどしている」と糾弾しています。さらに、仲介業者と結託して不正を働いた社員がいたこと、3ヶ月以上の家賃滞納者への立ち退き要求スキームがあるにも関わらず、家賃滞納者に立ち退きを迫らずに2年以上放置していたこと、部屋の退室に関し解約処理をわざと翌月にずらし、契約状態の部屋とカウントすることで入居率の上乗せを図っていたことなどが指摘されています。こうした報道は世間に広まり、一時的な株価急落にも繋がりました。
レオパレス側の主張
1.審査不合格者の入居、家賃滞納者の居座り容認について
レオパレス側は、審査不合格者の入居、家賃滞納者の居座り容認といった事実はないと否定しています。その上で、審査基準については各種与信情報等を勘案しレオパレスが独自に設定していること、家賃滞納者に対しての家賃回収は適時行っており、必要に応じて法的な手続きを取っていることを主張しています。
2.3ヶ月以上の家賃滞納者の放置について
当該指摘に対しては、3ヶ月以上の家賃滞納者に立ち退きを迫らなければならないとする法令・諸規則あるいは社内スキームはそもそも存在しないことを確認したうえで、家賃滞納者に対しての家賃回収は適時行っていると主張しています。
3.解約処理をわざと翌月にずらしているとの指摘について
当該指摘に対しては、事実無根と否定するとともに、入居率は機械的に算出されており、人為的に操作することはできない仕組みとなっていること、オペレーション上意図的な不正操作をしたことは確認されていないこと、決算に影響するものとは認められない旨が述べています。
4.仲介業者と結託して不正を働いた社員がいたとの指摘について
当該指摘に対しては、不正な仲介契約及び不正な転貸借契約が行われていた事実は確認しており、該当者に対しては社内規定に基づき厳正な処分を行っていると回答しています。その上で、一連の不正な契約による損害は全額回収済であることを合わせて主張しています。
レオパレス側の今後の対応
週刊新潮の報道等により、10月19日時点で354円だったレオパレスの株価は、20日には274円(ストップ安)と大幅な下落を見せました。週刊新潮では、2022年10月27日号でも、レオパレスに関する記事を掲載しており、事実無根を主張するレオパレス側と全面対決の様相を呈しています。今回、レオパレス側は、名誉棄損に基づく訴訟提起の準備中である旨を発表しました。
名誉棄損の構成要件である、(1)公然と、(2)事実を摘示して、(3)人の名誉を毀損するという要件を満たすことは、まず間違いありませんので、刑法第230条の2第1項の適用で違法性が阻却されるか否か、特に、「真実であることの証明があること(真実性)」又は「真実ではなかった場合でも、真実であると誤信したことについて、確実な資料・根拠と照らして相当の理由があること(真実相当性)」を満たすか否かがポイントになりそうです。
【刑法第230条の2第1項】
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週刊誌側の名誉棄損が認められた事例
2020年12月21日、お笑いコンビ「爆笑問題」の太田光氏が、大学に裏口入学したとする週刊新潮の記事が名誉毀損にあたるとして、同誌を発行する株式会社新潮社に対し約3,300万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は、太田氏に対する名誉毀損を認め、440万円の損害賠償とインターネット上の記事の削除を命じています。判決中では、「取材源が話した内容に対する十分な検討や裏付け取材が行われたとは言い難い」旨の指摘があり、さらに、記事が真実であると誤信するに足りる相当な理由があったとは認められないとされました。
また、2015年6月には、日本経済新聞社と同社の当時の社長らが、「社長の部屋に女性デスクが宿泊していた」などとする記事週刊文春の事実無根の見出しと記事が名誉棄損であるとして、株式会社文芸春秋を提訴していた訴訟で、最高裁は一審・二審の判決を支持して、計1210万円の損害賠償と週刊文春のウェブサイト掲載記事(写真含む)の削除、日経本紙と週刊文春への謝罪広告の掲載を命じています。
コメント
入居率の高低は、レオパレスの売上、ひいては株価に多大な影響を与える指標となるため、今後の訴訟で明らかになるであろう、「入居率嵩増しの事実の有無」は、投資家の判断にも多大な影響を与えると予想されます。
過去の判例を見ても、掲載内容が真実か否かもさることながら、週刊誌側が十分な検討や裏付け取材を行ったか否かが争われるケースが少なくありません。週刊新潮にて報道した内容を裏付ける証拠を新潮社側がどれほど揃えているのか、十分な取材等を行ったことをしっかりと立証できるのか、今後の展開に要注目です。
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