日弁連、顧問弁護士利用のためのコンプライアンス・チェックシートを公表
2022/12/16 コンプライアンス, 民法・商法, 弁護士法
はじめに
日本弁護士連合会は、顧問弁護士利用のためのコンプライアンス・チェックシートを公表しました。このコンプライアンス・チェックシートは、60に及ぶ質問で構成されており、その回答内容により、弁護士への法律相談や顧問契約の締結などをサジェストするものです。
チェックシート公表の背景として、日本弁護士連合会は、日ごろ依頼を受ける中で、「もっと早く弁護士が関与していれば、法的トラブルの発生を防げたのでは」、「ここまでこじれなかったのでは」と痛感する事例が少なくないことを挙げています。
日本弁護士連合会としては、企業側に適切なタイミングで弁護士と接点を持ってもらうことで、予防法務を実現し、企業の経営戦略の推進に貢献したい想いがあるとのことです。
チェックシートの概要
チェックシートは、以下の3ステージで構成されています。
1.大きなトラブルに遭わないための基本事項のチェック
2.企業の体制を充実させるための基本事項のチェック
3.事業展開のための弁護士の積極的活用方法のチェック
各ステージは、それぞれ、(1)会社の組織に関するルール、(2)従業員に関する職場のルール、(3)取引先との間の取引上のルール、(4)IT や知財などの新しいルール、(5)弁護士との関係の築き方という5つのジャンルをテーマとした20の質問からなっています。
ステージ1は、例えば、「株主が誰か、よくわからない」、「⾦額や納期をはっきりせず、取り敢えず受注してしまうことがよくある 」など、法務以前に、会社として留意すべき基本的事項を確認する内容となっています。その上で、チェックが5つ以上ついたら、弁護士と顧問契約締結を検討すべしと指標を示しています。
一方、ステージ2は、「セクハラ・パワハラは従業員同士の問題で会社の問題ではない」、「取引先と契約書を交わしても条項に目を通すことはない」など、法務体制を構築するうえでの基本的事項を確認するチェックリストになっています。チェックが5つ以上付いたら、弁護士と相談して法務体制の充実を図るべきとのことです。
最後のステージ3は、「取引先が⽤意した契約書について、取引先に修正を求めたことがない」、「インターネット上の取引にどういう法的な規制があるかよくわからない」など、ステージ2よりも一歩進んだ法務体制の構築に関する質問から成っています。チェックしたものの中で、興味の強い事項に関し、弁護士に相談してみたらよいとしています。
ちなみに、これらチェックリストの内容は、弁護士業務改革委員会 企業コンプライアンス推進PTが作成したものであり、日弁連としての見解ではないと留意されている点にご注意ください。
コメント
今回のコンプライアンスチェックシートは、社内で法務機能があまり整備されていない企業を念頭に作られたものですが、法務機能が置かれている会社においても、自社の法務体制の充実度合いを測る指標として活用できると思います。ひとまず、このチェックシートに一つもチェックが入らない体制を目指してみるのもよいのではないでしょうか。
近年、予防法務の重要性が認識され始めており、社内に専任の法務担当者を置く企業も増えて来ました。このような状況下では、顧問弁護士に外注すべき業務と社内で処理すべき業務との仕分けや外注先のクォリティー管理も重要になって来ます。
法務部門としては、社内の法務担当者の持つスキルセット・経験や、業務が抱えるリスクの大きさ等を照らし合わせながら、適切な外注ルールを制定する必要があります。
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