契約締結前の説明義務と契約上の義務との関係 最高裁で判断
2011/04/24 契約法務, 民法・商法, その他
事件概要
22日、最高裁判所第二小法廷において、契約締結前の説明義務違反につき争われたが、契約締結の可否に関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合でも、相手方が契約締結により被った損害につき債務不履行責任は負わないとした。
すでに債務超過にあった信用組合が、出資者に対して、出資契約を締結する前に、自らの経営破綻のおそれについて説明しなかったとして、不法行為、詐欺取り消し、もしくは錯誤無効を理由とする不当利得の返還を求めていた。また、予備的に出資契約上の債務不履行による損害賠償も求めていた。
判決のポイント
まず、今回の説明義務は、契約締結前に関する義務であり、契約本来の義務とは区別される。
説明を受ければ、およそ契約をしなかったであろうという、今回の事実関係から判断される。
次に、債務不履行については、契約関係を前提に判断することになるが、今回の説明義務は、契約関係に付随するものとは言えないため、この点について、今回の事件では適用されない。
この点に関して、契約締結前の過失の1類型として契約準備段階の付随義務など、いろいろと考えられるが、これらについて一般に論じられている部分は、実質的には、契約上の債務との関連性があり契約の前後で質的に大きな違いがあるとはいえないと考えられる。
そして、今回のように、本来の債務とは区別された契約締結前の状態においては、契約の準備段階で、一方当事者にどのような義務があり、それがどのような内容なのかについて類型性がない。ゆえに、本来の契約関係で考えられる債務不履行によるのではなく、不法行為によって処理することになる。
そして、今回の事件では、不法行為の消滅時効を適用するのが妥当としている。
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