発売前の週刊少年ジャンプの画像投稿で逮捕/海賊版による著作権侵害について
2024/02/09 知財・ライセンス, 訴訟対応, 著作権法, エンターテイメント
はじめに
人気漫画雑誌として知られる「週刊少年ジャンプ」。そのジャンプの発売前に、漫画ページの画像をインターネットに投稿したとして、会社経営者ら2人が著作権法違反の疑いで逮捕・送検されました。
近年、発売前の漫画がインターネット上に違法公開される、いわゆる「早バレ」が横行し、問題となっています。
“早バレ”経営者ら逮捕
報道などによりますと、逮捕されたのは、アニメ関連グッズの販売会社、Japan Deal World合同会社を経営する男ら2人。
男らは、2023年3月15日ごろ、発売前の週刊少年ジャンプを入手し、デジタルデータ化した上で、インターネット上に無断アップロードしたほか、先月31日にも発売5日前の漫画の画像をスマートフォンで撮影し複製したとみられています。
熊本県警などは、2月4日に両名を著作権法違反(公衆送信権の侵害、複製権侵害)容疑で逮捕し、5日に送検しています。また、法人としてのジャパンディールワールド合同会社も著作権法違反の疑いで書類送検されています。
今回、違法にアップロードされたのは、ジャンプで連載されている漫画「ONE PIECE」や「呪術廻戦」で、複製された画像は、外国語に翻訳された上で、色をつけるなどの加工が行われ、いくつかのサイトやSNSに投稿されていました。
漫画雑誌を入手した経路については、出版社が全国一斉で正規の発売日に販売できるよう、事前に流通させていたものを、会社を通じて入手し、犯行に及んだとみられています。
「早バレ」をめぐっては、原作者らの権利が大きく侵害されるとして問題視されており、警察は漫画の画像が流出したルートについて詳しく調べを進めています。
今回の逮捕を受けて、集英社は「これからも著者が心血を注いで作り上げた作品とその権利を守り、読者の皆さまに漫画を適正な形で楽しんでいただくことができるよう、あらゆる対策を積極的に講じてまいります。」とコメントを発表しています。
国際的海賊版早バレサイトに係る容疑者逮捕の報道を受けて(株式会社集英社)
総額19億以上の賠償請求に繋がった事案も
漫画の著作権をめぐっては、10年以上前から、海賊版サイト等への違法アップロードが世界各地で繰り返されています。違法アップロードの増加に伴い、取り締まりも強化されていますが、海外のサーバーや配信事業者の利用により、サイト運営者の特定が困難となるほか、手口が多様化・巧妙化しており、いたちごっこの構図から抜け出せていない状況です。
そうした中、2022年7月、出版大手のKADOKAWA・集英社・小学館の3社は、海賊版サイト「漫画村」の元運営者の男に対して、合わせて約19億2960万円の損害賠償を求め、提訴しています。
提訴の前年、漫画村の運営者は、漫画の画像ファイルを誰でもみられるようにしたとして著作権法違反(公衆送信権の侵害など)と、組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)の罪で、懲役3年、罰金1000万円、追徴金約6257万円の判決を言い渡されていました。
この判決を受け、KADOKAWAら3社は、漫画村が掲載していたコミックスの最大巻数(7万巻以上)やサイトアクセス総数(5億と推計)、実際の作品の販売価格などを元に、損害を算定。その一部の賠償を求め、訴訟を提起しました。19億円超という請求額は、海賊版サイト関連の民事訴訟においては過去最大ということです。
「漫画村」運営者に対して、総額19億円の損害賠償を求め提訴(株式会社KADOKAWA)
コメント
クールジャパン戦略の一環として、国をあげた情報発信・海外展開などが推進されている漫画分野。海賊版サイトへの違法アップロードの多さは、それだけ作品の魅力が大きい証拠でもありますが、長年にわたる深刻な著作権の侵害に、出版業界からは「漫画業界が足元から崩れかねない」と危機感を強める声も聞かれます。
法改正なども視野に、海賊版サイトの収益源である“広告”を出稿できない仕組み作りや海賊版サイトでの作品閲覧の規制などに乗り出す必要がありそうです。
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