「関西スーパー」がH2Oの完全子会社へ、完全子会社化スキームについて
2024/06/24 商事法務, 会社法, 小売
はじめに
「関西スーパー」などのスーパーマーケットを展開する「関西フードマーケット」は20日、株主総会でH2Oの完全子会社となることが承認されていたことがわかりました。7月には上場廃止とのことです。今回は完全子会社化のスキームについて見直していきます。
事案の概要
関西フードマーケット(旧関西スーパーマーケット)は、2021年に関東のスーパー「オーケー」によってTOBによる買収が提案された際、結局H2Oの傘下に入ることが決定した経緯があります。現在H2Oは関西フードマーケットの株式の約65%を保有しており、先日開催された株主総会で株式交換によって関西フードマーケットがH2Oの完全子会社となることにつき承認決議がなされたとされます。総会で株主からは、関西スーパーの割引セールなどの取り組みが今後変わるのかとの質問がなされ、会社側は、現段階では変えることは考えていないとしながらも、競合に対抗するため変化が求められる部分はあるとしております。なお同社は7月で上場廃止となる見通しです。
完全子会社化の手法
完全子会社化とは、ある会社がある会社の株式を100%保有する状態を言います。通常ある会社の株式の50%超を保有すると親子会社関係が発生しますが、それをさらに進めて100%まで保有した状態です。会社再建や経営方針決定のスピード化などが目的です。完全子会社化を行う手法としては、まず任意で個々の株主から買い取る、場合によってはTOBを行う、そして残った少数株主をスクイーズアウトするという流れが考えられます。スクイーズアウトの方法としては、それまでの任意買取りなどでどの程度株式を買い集めることができたかにもよりますが、全部取得条項付種類株式への変更、株式併合、株式交換などが利用されます。また議決権の90%以上を確保することができた場合は特別支配株主として株式売渡請求を行うことができます。
株式交換の手続き
株式交換とは、親会社となる会社が子会社となる会社の株式を100%取得し、子会社となる会社の株主には親会社の株式などを対価として交付する制度です。これは合併や分割などと同じく組織再編行為の一種です。株主総会の特別決議で承認されれば、その他の手続きを要することなく100%株式が取得できるというメリットがありますが、組織再編でもあることから手続きは複雑です。具体的な流れとしては、(1)株式交換契約の取締役会での承認と締結、(2)事前開示による書類備え置き、(3)株主総会の招集と株式買取請求通知、(4)株券提供公告と債権者異議手続き、(5)株主総会での承認決議、(6)効力発生と完全子会社株主への株式等の交付、(7)登記と事後開示書類の備え置きとなります。なお債権者異議手続きは子会社側の新株予約権付社債を親会社側が承継する場合や、子会社側の株主に交付する対価が株式等以外の場合となります。
株式併合の場合
任意買取やTOBで90%に満たなかった場合など、株式併合が利用される場合があります。株式併合は、完全親会社となる株主以外の株主の持ち株が1株未満となる併合割合を設定し、1株未満の株式を金銭処理するという手法です。株式交換のような組織再編行為ではありませんが、近年それに近い運用がなされていることから、手続きも組織再編に近いものとなっております。まず(1)取締役会で株式併合の実施の決定、(2)株主総会招集、(3)事前書類の備え置き、(4)株式買取請求通知、(5)株主総会での承認決議、(6)効力発生と登記と事後開示書類の備え置きとなっております。なお1株未満の端数となった株式の買取は株式併合の効力発生日以降に行われることとなります。
コメント
2021年に関西スーパーは関東のオーケーとH2Oとで、どちらが買収するかで争われておりました。最終的にH2O傘下に入り、関西スーパーが子会社となることで決着がついておりましたが、今回株式交換によって完全子会社化し上場廃止となることとなりました。すでにH2Oが約65%を保有していたことからほぼ単独で株主総会での特別決議を得られる状況となっておりました。7月31日が効力発生日とのことです。以上のように近年では完全子会社化からの上場廃止という流れによる企業再編が多くなっております。以前はその手法として全部取得条項付種類株式への変更と取得が行われておりましたが、近年では株式併合や株式交換が多く使われているようです。また90%以上取得できた場合はより簡易な売渡請求も利用できます。グループ再編の際にはどのような手法があるのかを把握して自社にあったスキームを選択していくことが重要と言えるでしょう。
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