大阪地裁が西山ファーム元代表に賠償命令、欠席裁判について
2024/09/11   コンプライアンス, 出資法・貸金業法, ライフサイエンス・アグリビジネス

はじめに

 観光農園を運営していた「西山ファーム」が不正に資金を集めていた問題で、大阪府などに住む被害者34人が元代表を相手取り、損害賠償を求めていた訴訟で大阪地裁は6日、請求通り計約1億2800万円の支払いを命じていたことがわかりました。元代表は出頭していなかったとのことです。今回は欠席裁判について見ていきます。

 

事案の概要

 報道などによりますと、西山ファームは2015年頃から在庫がない果物をクレジットカード決済で購入させるという方法を始め、手口を変えながら19年頃まで破綻が確実で出資者が多大な損害を被る不正な資金集めを行っていたとされます。これに対し大阪府などに住む被害者34人が西山ファームの元代表に対し計約1億2800万円の損害賠償を求め、大阪地裁に提訴しておりました。なお同ファームの元代表は出資法違反の罪に問われ、今年7月に名古屋地裁で懲役2年、執行猶予4年、罰金150万円の有罪判決を受けているとのことです。

 

民事訴訟と主張・立証

 不法行為に基づく損害賠償や、貸金の返還を裁判で求める場合、原則として原告側が被告の故意や過失、損害や因果関係、金銭の交付、返還合意などを主張・立証することとなります。それに対し被告側は否認したり、金銭を受領したが別の債権の弁済として受け取ったなどと主張したりします。このように当事者は互いに主張と立証を繰り返し、審理が尽くされたら裁判所が判決を言い渡すこととなります。民事訴訟では基本的に民法などの実体法に基づいて、どちら側が何を主張・立証するかが決まっております。そしてその主張・立証の責任を追う側が立証できなかった場合はその事実は無かったこととして扱われます。またその事実について自白が成立した場合は、当事者は証明する必要がなくなり、また裁判所はそのまま判決の基礎としなければならなくなります(民事訴訟法179条)。たとえ裁判所がそれとは異なる印象を抱いていたとしても自白された内容で判決する必要があるということです。

 

当事者が欠席した場合

 訴訟が提起されると裁判所は第一回期日を指定して被告に知らせます。しかしこの第一回期日に当事者双方が欠席した場合、審理が行われずその期日は終了してしまうこととなります。この場合、1ヶ月以内に期日指定の申立をしない場合、または当事者双方が連続して2回欠席した場合は訴えの取り下げがなされたものとみなされます(263条)。多忙な裁判所の貴重な期日を無駄にすることに対するペナルティとも言えます。それでは当事者の一方だけが欠席した場合はどうなるのでしょうか。欠席した一方当事者が訴状または答弁書その他の準備書面を提出していた場合、それに記載していた事項を陳述したものとみなして、出頭した相手方に弁論をさせることができるとされます(158条)。これを陳述擬制と言います。しかし欠席した当事者がそのような準備書面を提出していなかったり明らかに争っていない事項については自白したものとみなされます(159条3項)。これらは一方が出頭しているにもかかわらず何も審理せずに期日が終了するのは出頭した当事者に酷だからです。なおこの陳述擬制が認められるのは原則として最初の期日のみですが、簡易裁判所の場合は続行期日でも認められます(277条、158条)。

 

当事者の欠席と判決

 民訴法244条によりますと、裁判所は当事者の一方または双方が口頭弁論の期日に欠席し、または弁論をしないで退廷した場合、審理の現状および当事者の訴訟追行の状況を考慮して相当と認めるときは終局判決をすることができるとしております。上で述べたように当事者の片方が最初の期日に欠席しても準備書面などを提出していればその記載事項を陳述したものと扱われますが、そうでない場合は相手方が訴状などで主張している言い分を認めたことになってしまいます(擬制自白)。そしてそのまま出席して反論することなく裁判所が相当と認めた場合は原告側の言い分を100%認めた内容の認容判決がでてしまうこととなります。完全な敗訴ということです。これを欠席裁判と言います。

 

コメント

 本件で、西山ファームの不正な出資金集めによる被害者34人が同ファームの元代表を相手取り計約1億2800万円の損害賠償を求めた訴訟で、被告の元代表は口頭弁論に出頭せず何ら反論もしなかったとされます。大阪地裁は被告が事実を争わないものと判断し、原告の請求通り満額の支払いを命じました。裁判長はスキームが違法かつ破綻必至で、原告が多大な損害を受けると容易に知り得たにもかかわらず、資金調達を行っていたと指摘しております。以上のように民事訴訟では当事者が欠席した場合にどのように扱われるかが規定されております。特に被告が最初から最後まで欠席し、何ら反論しない場合は欠席裁判と言って原告側の請求が100%認められてしまうこととなります。訴えが提起された場合は、仮に相手方の言い分を認める場合でもこのように欠席したりせず、専門家に依頼するなど適切に対応していくことが重要と言えるでしょう。

 

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