建設作業中の指切断を報告せず、香川県の工事会社社長らを労災隠し容疑で書類送検
2024/09/24 労務法務, 外国人雇用, 危機管理, 労働法全般, 建設
はじめに
香川県の道路建設の現場で、男性作業員が作業中に指を切断したにも関わらず、労災として報告しなかったとして、9月17日、高松市の工事会社と会社の代表取締役などが労働安全衛生法違反の疑いで書類送検されました。
外国人作業員の負傷で労災隠しか?
9月17日、高松市のコンクリート工事業、川谷生コン圧送有限会社と、同社の代表取締役・取締役など合わせて4人が書類送検されました。
報道などによりますと、2023年12月、香川県内の道路建設の現場で、外国人の男性作業員(20代)が足の指4本を切断する事故が発生したということです。男性作業員は当時、工事用車両の後ろに立って別の車両を誘導中でした。その際、車両2台の間に右足を挟まれ、切断したということです。
関係者からの報告を受け、今年7月、労働基準監督署が調査を実施。「労働者死傷病報告」が未提出との疑いが浮上しました。
労働安全衛生法上、労働者が労災によるけがで4日以上休んだ場合、事業者には「労働者死傷病報告」の提出が義務付けられています。
しかし、川谷生コン圧送においてこの報告書の提出が確認されませんでした。
そのため、代表取締役ら4人が共謀して提出を行わなかった「労災隠し」の疑いがあるとして、東かがわ労働基準監督署は、9月17日付けで、会社と代表取締役ら4人を書類送検しました。
労働者死傷病報告について
労働者死傷病報告は、以下の4つのケースのいずれかが発生した場合に、所轄の労働基準監督署長に提出しなければならないものです(労働安全衛生法第100条1項)。
(1) 労働者が労働災害により、負傷、窒息又は急性中毒により死亡し又は休業したとき
(2) 労働者が就業中に負傷、窒息又は急性中毒により死亡し又は休業したとき
(3) 労働者が事業場内又はその附属建設物内で負傷、窒息又は急性中毒により死亡し又は休業したとき
(4) 労働者が事業の附属寄宿舎内で負傷、窒息又は急性中毒により死亡し又は休業したとき
ちなみに、労働災害の発生が就業中でなくても、事業場内または付属建設物内で発生した場合には提出する必要があります。
また、報告を行う場合、休業日数によって使用する報告様式が異なるため、注意が必要です。
◯「死亡」または「休業4日以上」の場合
・災害発生後遅滞なく1ヶ月以内 (様式第23号)
◯ 休業1日以上3日以下 の場合
・1月~3月の災害⇒4月末日まで
・4月~6月の災害⇒7月末日まで
・7月~9月の災害⇒10月末日まで
・10月~12月の災害⇒翌年の1月末日まで
(様式第24号)
労働者死傷病報告の未提出で罰金刑も
事業者が労働災害事故の発生を隠す目的で「労働者死傷病報告」を故意に提出しないまたは虚偽の内容を記載して提出した場合、いわゆる「労災隠し」と見なされます。労災隠しは犯罪で、50万円以下の罰金が科されます。
今年7月には虚偽の内容を報告したとして、建設会社が書類送検されています。
◯東京・王子労働基準監督署での事案
東京都北区の地下駐輪場の建設現場で労災が発生し、埼玉県越谷市に本社を置く建設会社の労働者が資材に手をはさまれて骨折し、113日休業した事案。建設会社と同社代表取締役は、“自社の敷地内で起きた”とウソの報告書を作成し、越谷市を管轄する春日部労基署へ提出しました。その後、同社は、労働安全衛生法第100条(報告等)違反などの疑いで書類送検されました。
コメント
事業者が労災隠しに走る理由として、
・労災保険の保険料値上がりの回避
・煩雑な申請手続きの忌避
・企業の評判・イメージの保持
・労災調査による他の法令違反発覚へのおそれ
などが挙げられるといいます。
しかし、労災隠しは明確な犯罪で、労災隠しの発覚は、深刻なイメージ低下へと繋がり、仕事の受注・採用などに大きく響くことになります。
また、隠し通そうにも、被災労働者による内部告発や、被災労働者を診察した病院等からの通報などで労災隠しが後から発覚するケースも少なくありません。
事故発生時に、迅速に状況を把握し、スムーズに申請手続きを行う体制を会社として整えておく必要があります。
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