川崎重工業が架空取引で裏金ねん出、約12億円所得申告漏れか
2024/12/25   税務法務, コンプライアンス, 租税法, 税法, メーカー

はじめに


今年7月、川崎重工業株式会社において、架空取引で捻出した裏金を海上自衛隊の潜水艦の乗組員への金品提供や飲食接待などに使っていた問題が発覚しました。
これを受けて大阪国税局は税務調査を進めてきましたが、今月、これらの費用に関し、「経費と認められない“交際費”にあたる」と判断。「悪質な仮装隠蔽を伴う所得隠し」と認定したと報じられています。川崎重工業は修正申告する方針だということです。

 

川崎重工業が裏金作りか


この問題は川崎重工業が下請け企業との架空取引で捻出した裏金を使って、海上自衛隊の潜水艦乗組員らに対して飲食代などを負担していたとされる問題です。

架空取引が行われていたのは同社の神戸工場修繕部。川崎重工業が海上自衛隊から請け負い建造した12隻の潜水艦の修理や検査を行っています。同部門では潜水艦を定期的に修理していますが、その際に下請け企業に資材などを架空発注し、プールさせる方法で裏金を作っていたといいます。
不正にプールした金は商品券や家庭用ゲーム機などの購入資金に充てられ、潜水艦の幹部自衛官や一般の乗組員などに提供されたほか、飲食接待を行なうためにも使われたとみられています。

こうした裏金作りは約20年前から続いていたとみられています。海上自衛隊出身者が川崎重工業の下請け先に再就職した後、現役の潜水艦乗組員らに物品などを提供するよう働きかけたことから始まったと報じられています。

 

大阪国税局が“交際費”と判断


大阪国税局は、経費として計上されていた一連の内容について、経費と認められない“交際費”と判断。申告漏れは2023年3月期までの6年間で毎年約2億円程度、合わせて約12億円になる模様です。
悪質な仮装隠蔽を行った際に課される重加算税を含む追徴税額は、少なくとも約6億円となる見通しです。

現在、防衛省は「特別防衛監察」を実施し、年内にも監察の中間報告をまとめる方針ですが、これまでの調査の過程で一部の隊員が飲食接待を受けていた可能性があると判明しているということです。
また、乗組員の中には、潜水艦の修理作業には関係がない、防寒着や作業用の靴などの購入を川崎重工業側に依頼していた者もいると指摘されています。

川崎重工業側も裏金づくりなどに関与した人数、金品の流れを具体的に調べるため特別調査委員会を設置。調査結果が年内にも公表される予定です。

 

交際費について


今回問題となっている「交際費」。交際費は、ほかの経費とは税法上の扱いが異なります。

国税庁では、「交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出するもの」と定義しています。

交際費はいわゆる取引先などへの接待などの費用です。会社の規模により上限額などが異なる上、経費として認められるために以下の条件を満たす必要があります。

・事業の発展に必要であり、適切な支出だと証明できること
・金額が過度ではないこと
・公私の区別がしっかりと示されていること

これを見ても分かるように、会社の事業と関係のない支出は交際費とは認められません。具体的に接待交際費に計上できない支出としては、

・会食費用が1人当たり1万円以下
・事業と関係がない飲食代金
・社内行事の費用
・打ち合わせの飲食代

などが挙げられます。その一方で、これらの費用は、会議費や福利厚生費などで計上できる場合があるため、丁寧な確認が必要です。

 

コメント


今回の問題は大阪国税局の税務調査によって発覚しました。
「申告漏れ」は、納税者による計算ミスや計上ミスなどで税金を過少申告することを指します。税法解釈の誤りや手続きするのを遅れてしまった場合にも該当します。

一方で売上の隠蔽、二重帳簿の作成、領収書の偽造など、故意にウソの申告をすることで、納税額を減らしたり、税金自体を納めないと「脱税」とみなされます。
脱税が発覚すると重加算税が課されます。納税者が事実を隠蔽または仮装したペナルティーとして本来の税額に35%以上の税率を加算して賦課されます。

例えば、故意に過少申告した税額が1億円に及んだ場合には、「1億円の納税+3500万円以上の重加算税」を納める必要があります。

法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)_国税庁

故意に裏金作りを行わないのはもちろんのこと、ミスによる申告漏れを起こさないよう日々の経理処理を適切に行うことが重要です。

 

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