外国人雇用の理由「労働力不足の解消や緩和」が60%超 -厚労省
2025/01/07 労務法務, 外国人雇用, 労働法全般
はじめに
厚生労働省が日本で働く外国人についての調査を初めて実施し、その結果を公表しました。
その中で、事業者が外国人を雇用する理由について「労働力不足の解消や緩和」が最も多く、60%を超えたということです。
事業者、外国人労働者へ初調査
厚生労働省は「令和5年外国人雇用実態調査」の結果を取りまとめました。これは外国人労働者を雇用する事業所での雇用状況や労働環境を調査したものです。具体的には、次の内容を産業別、在留資格別などに明らかにすることを目的として、今回初めて実施されました。
・外国人労働者の雇用形態や賃金等の雇用管理の状況
・事業所の外国人労働者の状況
・入職経路
・前職に関する事項
調査は、これらの内容について、2023年9月30日現在の状況を確認する形で、同年10月から11月までの間に実施されました。約3,500の事業所とそこで働く外国人約1万1,000人から回答を受けています。
事業者の6割超、人手不足解消期待し雇用
調査では、事業者側に『外国人労働者を雇用する理由』を尋ねる項目がありましたが、回答で最も多かったのが「労働力不足の解消・緩和のため」で64.8%に上りました。
その次に多かったのが、「日本人と同等またはそれ以上の活躍を期待して」で56.8%。続いて、「事業所の国際化、多様性の向上を図るため」18.5%、「日本人にはない知識、技術の活用を期待して」16.5%といった結果となりました。
また、『外国人を雇用する上での課題』として、コミュニケーション面に苦労する事業者が多いことがわかりました。また、2割近い事業者が在留期間の上限があることに課題感を抱いていることも明らかとなりました。
「日本語能力等のためにコミュニケーションが取りにくい」44.8%
「在留資格申請等の事務負担が面倒・煩雑」25.4%
「在留資格によっては在留期間の上限がある」22.2%
「文化、価値観、生活習慣等の違いによるトラブルがある」19.6%
労働者側は“トラブルの相談先わからない”
一方で、労働者側への調査では『就労上のトラブル』について質問がされました。
今の仕事をする上でのトラブルや困ったことの有無について尋ねたところ、「なし」 82.5%、「あり」14.4%という結果となりました。
「あり」と回答した労働者にトラブルの内容を複数回答可で質問したところ、「トラブルがあった際の相談先がわからない」という回答が2番目に多い結果となりました。
「紹介会社(送出し機関含む)の費用が高かった」19.6%
「トラブルや困ったことの相談先がわからなかった」16.0%
「事前の説明以上に高い日本語能力が求められた」13.6%
「その他」34.5%
また、現在の仕事への入職前の居住地が“日本以外”だった労働者のうち約8割が紹介会社や個人からの紹介で現在の仕事に入職していることも明らかになりました。
コメント
帝国データバンクによりますと、従業員の退職や採用難、人件費高騰などによる「人手不足倒産」の件数は2024年度上半期(4-9月)で163件に達したということです。一時よりは落ち着いているということですが、依然として人手不足感が高止まりしている状況です。そのため、今後も小規模事業者を中心に人手不足倒産が続出すると考察されています。
人手不足倒産の動向調査(2024年度上半期)_帝国データバンク
この状況を解消するため、外国からの労働者を雇用する事業者が増えています。一方で、今回の調査で判明したように、一定数の事業者・労働者がトラブルを経験しています。
こうしたトラブルを最小限にするため、事業者側はまず大前提として、「就労可能な外国人を雇用すること」が求められます。在留カードやパスポートなどで身元確認を行い、就労が認められるビザを持っているかをチェックすることが大切です。
また、外国人労働者に対する適切な労働環境の整備も必要です。労働基準法第3条では、「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」と定められています。外国人労働者に対する差別を行わないよう社内周知するほか、外国人労働者が困った際の相談窓口を設けるなどの対応が重要となってきます。
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