【京都地裁】葬祭積み立ての中途解約条項は無効
2011/12/17 消費者取引関連法務, 消費者契約法, その他
【京都地裁】葬祭積み立ての中途解約条項は無効
京都地裁は13日、将来の冠婚葬祭に備えて積み立てを行う互助会契約の中途解約に高額な手数料を徴収するのは消費者契約法に違反するとして、NPO法人「京都消費者契約ネットワーク」が冠婚葬祭会社セレマを相手に起こしていた訴訟で、瀧華聡之裁判長は、中途解約手数料条項の使用差し止めと、元互助会会員8人の解約手数料計約39万円のうち約35万円の返還を命じる判決を下した。
■セレマの互助会契約
互助会の会員がそれぞれ掛け金を出し合うことで、冠婚葬祭に必要な設備等を共同購入。これにより、格安の価格で冠婚葬祭のセレモニーを催行できるという契約である。
■セレマの中途解約手数料
セレマの会員は、コース別に月額積立額と積立回数が異なるが、概ね月額1000円から2500円で、最終的に10万から50万円を積み立てることとなっている。
そして、当該積み立ての「解約手数料」は、2500円を200回積み立てるコースの場合で、支払い9回目までは全額(2500円×1~9)、10回の積み立てをした者で、2万4650円▽11回目以降は1回増えるごとに250円増額などと規定されている。支払い回数が少ない互助会会員の解約時には、積立てたお金のほぼ全額が解約手数料としてとられることとなる。
■消費者契約法第9条1号
あらかじめ定められた解約手数料の額が、解除の事由、時期等に照らし、同種の契約の解除に伴って事業者に生ずる平均的な損害の額を超える場合には、当該超える部分については無効となる。
※セレマ側の主張※
セレマ側は、今回問題となった解約手数料につき、「解約手数料は、会員募集費や不動産管理費、人件費、設備維持費をもとに算定された平均的な損害額であり、監督官庁や業界団体「全日本冠婚葬祭互助協会」の指導・基準に基づいた適正なものである」と主張している。
京都地裁の判断
「全日本冠婚葬祭互助協会」のモデル約款に準じているため条項は適法としたセレマ側の主張について、「モデル約款をもって合理的規定として考慮できない」と退けた上で、今回、解約手数料の根拠として挙げた不動産管理費や人件費、設備維持費についても「解約にかかわらず常に生じる経費に過ぎない」と指摘した。
さらに、会員募集費については、「実際の葬祭時には積立金の何倍もの追加料金をとっていると推定され、会員募集は営業活動の一環だ」などとし、セレマ側が挙げた解約手数料の根拠をことごとく否定した。
結局、月掛け金の振り替え費用1回当たり58円だけをセレマの損害と認定している。
雑感
業界団体である全日本冠婚葬祭互助協会によると、セレマと同様の方式(互助会形式)をとる業者は全国299社(契約件数は約2372万件)で、そのうち、同協会の加盟社は244社、その多くは全日本冠婚葬祭互助協会の標準約款に準拠しているとみられるという。
個人的にも、契約書等を作成する際には、やはり、違約金をいくらにするかでかなり頭を悩ませられる。前述の消費者契約法や民法その他の法律の縛りが厳しい一方で、緩い違約金では、違約金を設定する目的が思うように達成されないことが多いからだ。
今回、このような判決が下されたことで、契約書を作る側はより一層デリケートな対応が必要となる。
以前にも、2年間の建物賃貸借契約の解約に、賃料・共益費の6ヶ月分の違約金を求める解約特約が、一般の居住用建物賃貸借契約解除に伴って貸主に生じる損害(賃料・共益費の1ヶ月分と認定された)を超えるものであるとして、当該特約が無効と判断されたケースもある。
各社の法務担当者は、この機会に今一度、自社の解約特約の違約金額の妥当性を検討してみてはいかがだろうか。
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