立命館一時金訴訟の和解が成立
2013/06/05 労務法務, 労働法全般, その他
事案の概要
立命館大学などを運営する学校法人立命館(京都市中京区)が一時金を減額したのは不当であるとして、教職員ら計205人が減額分約3億1000万円の支払いを求めていた訴訟の和解が5月31日、大阪高裁で成立した。内容は立命館側が解決金1億2540万円を支払うというもの。
教職員側は「請求通りではないが、裁判外で労使間の歩み寄りが期待できたので和解を受け入れた」とし、勝利和解であるとしている。
同法人は2005年にそれまで年6.1か月+10万円支払っていた一時金を労使交渉で労組側が合意しないまま1か月分カット。その後2006年に京都府労働委員会から提示された「現下及び将来の諸問題について合意できる環境づくりに向け、真摯に対応されたい」との斡旋案を労使双方が受諾していた。しかし、同法人側が労組との交渉に応じなかったため、教職員側は、「立命館学園一時金訴訟をすすめる会」を結成し、2007年、減額分の支払を求め提訴していた。
この訴訟については、2012年3月29日に京都地裁で、立命館側に約2億2900万円分の支払を命じる判決が出ている。
京都地裁判決によると、過去14年間、法人側が一時金のカットを志向しつつも、金額については6か月を目指すとの発言が繰り替えされていたとし、慣行となっていたにもかかわらず、6か月を下回る支給になったと指摘。「原告らと被告との間で、少なくとも年6か月の一時金を支給することが労働契約の内容となっていた」と認定した。
その上で、「経営上、一時金水準を切り下げる差し迫った事情があったとはいえず、当該労使慣行を変更する高度の必要性があったとは認められない」としていた。
この判決を受けて立命館側は控訴していたが、前述の通り、今回和解が成立した。
コメント
多くの人が、一時金を見込んで、住宅や車などのローンを組むのが通常であり、それが支給されるか否かは、生活に直結する問題である。経営危機から支給が困難であるといった事情があれば理解できるが、長年継続され慣行化されていたものが、合理的な理由もなく減額ないし不支給となれば、従業員側が反発するのは当然である。その点からしても、本件の立命館側は、誠実かつ慎重な説明をする姿勢を欠いていたといえる。
また法的には、一時金の支給については、就業規則等で、「給与月額の2.5か月分とする」というような具体的金額の定めがある場合、雇用主は一方的にこれを減額することはできない。本件事案では、就業規則上、立命館側は一時金支払の義務を負ってはいるが、具体的金額や算定基準が就業規則に規定されていないために、法人側の裁量で金額を決定できると主張。原告側と対立した。
そして判決において、一時金についても労使慣行が成立すると認められた。これは労働法制上意義のあるものといえる。
参考資料
上記、京都地裁判決文要旨(2012年3月29日)
労働協約が平成16年度まで14年にもわたって締結され、同額に基づいて一時金が支給されていたからといって、学校法人(理事長)が、将来にわたって本件基準額とすることを容認していたわけではなく、一時金について本件基準額とする規範意識を有していなかったことは明らかであるが、他方で、学校法人の各年度の回答において、6か月を目指す等と再三回答していたことから、一時金について、6か月以上の額を支払わなければならないとの規範意識に支えられていたと認めることができ、よって、職員らと学校法人との間で、少なくとも年6か月の一時金を支給することが労働契約の内容となっていたものと認めるのが相当である。
学校法人の財政状態が良好であったことは明らかであり、学校法人と同規模の他の私立大学(9私大)と比較すると学校法人の教職員の年収が低い水準にある状況からして、企業経営上、一時金水準を切り下げる差し迫った事情があったとはいえず、当該労使慣行を変更する高度の必要性があったとは認められず、当該労使慣行(年6か月分の一時金を支給すること)を本件一時金額とする旨の変更は、職員ら学校法人の教職員に対し、これを法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであるということはできない。
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