「クロレラ」広告に差止命令(京都地裁)
2015/01/26 広告法務, 消費者取引関連法務, 消費者契約法, 景品表示法, その他
事案の概要
21日、京都地裁は、健康食品「クロレラ」の広告について、あたかも医薬品のような効果があるかのように表示するのは景品表示法などに違反するとして、健康食品販売会社「サン・クロレラ販売」に対し、表示と広告配布の差し止めを命じた。原告によれば、景品表示法に基づいて差し止めを命じた判決は初だという。
同社と同一グループで所在地も同じ「日本クロレラ療法研究会」が、新聞の折込広告を配布していた。そこでは、利用者の体験談を列挙しつつ、「クロレラを摂取すれば、肺気腫、高血圧、自律神経失調症などの症状が改善する」などと宣伝していた。これが、景品表示法の「優良誤認」に該当するかどうかが争点となった。なお、クロレラとは淡水性の緑藻である。
本件では、適格消費者団体(※)たる「京都消費者契約ネットワーク」が原告となり、上記表示と広告の差し止めを求めていた。これに対して、同社側は、「研究会は会社とは別団体である」し、「広告には商品名を掲載しておらず、ただ単にクロレラの効能を記載しただけであり、誤解は与えていない」などと反論した。
しかし、判決は、同社の従業員全員が研究会会員となっており「研究会は会社から独立した存在ではない」し、「広告は研究会が勧める商品を購入するよう強く誘導するものであってその目的は販売促進である」と認定した。その上で、広告にはクロレラによって肺気腫などの症状が改善したという体験談が掲載されていることを指摘して、「医薬品としての承認を受けていないのに、消費者に医薬品であるとの誤認を引き起こすおそれがあ」り、これは「商品の宣伝広告として社会一般に許容される誇張の限度を大きく踏み越え」ており、したがって、「チラシが説明するような医薬品的な効能効果があろうがなかろうが、一般の消費者に、当該効能効果が国による厳格な審査を経ていると誤認させ、景品表示法の『優良誤認表示』に当たる」と判断した。
※適格消費者団体:消費者全体の利益擁護のために差止請求権を適切に行使することができる適格性を備えた消費者団体として、内閣総理大臣の認定を受けたものをいう(消費者契約法第2条第4項)。
コメント
景品表示法の「優良誤認」とは、「商品又は役務の品質、規格その他の内容について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると誤認される表示をすること」(同法10条1号)をいう。つまり、商品やサービスの内容が実際よりも著しく優良であると一般の消費者に誤認される表示を含む広告は「優良誤認」に該当することになる。そして、優良誤認にあたれば、消費者庁は措置命令を発することができる。命令に従わない場合は懲役や罰金の罰則もある。さらに、2016年春までには施行される見通しとなっている改正法によれば、命令を受けた業者には課徴金を科すこともできるようになる。
また、これまでの事例では、適格消費者団体による差止請求権の根拠は、消費者契約法に基づく場合が90%近くを占めてきた。その点、本判決は景品表示法に基づく差止請求を認めたものであり、適格消費者団体による差止請求権行使の機会を拡充するものと言える。
なお、「サン・クロレラ販売」は23日、本判決を不服として控訴したため、今後の展開が注目される。
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