不正競争防止法・独禁法・景表法の異同
2015/07/31 法務相談一般, 不正競争防止法, 独占禁止法, 景品表示法, その他
概説
不当景品類及び不当表示防止法(以下、景表法)が改正され、改正景表法の情報収集を行っている企業法務担当者は多い。景表法は独占禁止法(以下、独禁法)の特則として制定されており、その独禁法と不正競争防止法はよく似た法律であることから、今回はそれら3法の共通点や異なる点について説明する。
行政上の規制
不正競争防止法には、行政上の規制を定める規定はない。これに対して、独禁法においては、公正取引委員会による規制があり、景表法には公正取引委員会による規制のほか、消費者庁や都道府県からの規制も規定されている。
民事上の救済手段
次に民事上の救済手段について、3法とも差止請求権及び損害賠償請求権に関する規定が定められている。しかし、それらの権利を行使できる権利者や請求が認められる要件は異なっている。
まず、不正競争防止法は、競争事業者が「営業上の利益」(3条)を侵害された場合に差止請求が認められ、侵害者に故意又は過失がなければ損害賠償請求は認められない。
次に、独禁法上では、競争事業者が「著しい損害を生じ、又は生ずるおそれがあるとき」(24条)に差止請求が認められ、損害賠償請求については故意・過失が要求されておらず無過失でよいとされている。(*但し、排除措置命令または課徴金納付命令が確定していることが条件(26条1項)となるため、民法上の不法行為として損害賠償請求するケースが多い)
景表法においては、不正競争防止法や独禁法と異なり、競争事業者だけでなく適格消費者団体にも差止請求権(10条)が認められている。これは、同法が「一般消費者の利益保護」を目的としており、他の2法が「公正な競争」等を目的としている違いから生じている。損害賠償請求については、民法上の不法行為として請求していくことになる。
行為類型
不正競争防止法上の「不正行為」とは、品質等誤認行為と信用毀損行為を指す。前者の品質等誤認行為は、独禁法上の欺まん的顧客誘引と景表法上の優良誤認表示・有利誤認表示と重なり、後者の信用毀損行為は、独禁法上の競争者に対する取引妨害と重なる。行為類型に関して3法で大きく異なっているのは、以下の2点である。
① 景表法の有利誤認表示では、価格についても違反行為の対象となるが、不正競争防止法では、価格は対象とされていない。この点に関しては、価格の誤認惹起行為は品質等誤認行為に該当しないと判断されている。(前橋地裁平成16年5月7日判決)
② 独禁法の競争者に対する取引妨害では、競争者に対する取引妨害について方法を問わず広く認めているのに対して、不正競争防止法の信用毀損行為は、虚偽の事実告知や流布に限定されている。
コメント
企業の法務担当者は不正競争防止法・独禁法・景表法の重なり合いを意識せずに、それぞれの法に抵触しないかを個別に判断していくことが一般的であると思われる。しかし、類似する法律がある場合に、どの点が共通し、どの点が異なっているのかを意識することは、膨大な量の案件を効率的に処理していく手助けになる。法律の適用範囲の異同は事例の集積により明らかにされていくことも多く、条文だけでなく裁判の結果などにも視野を広げて情報収集を行っていくことが必要であるといえよう。
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