大阪の「民泊」逮捕事例と旅館業法改正
2016/04/27 コンプライアンス, 法改正, その他
はじめに
26日大阪府警は、無許可で大阪市内のマンションなどに外国人観光客らを泊まらせていたとして大阪市生野区内の女らを旅館業法違反の疑いで書類送検しました。外国人観光客が急増する中、それにともなって急激に広がりを見せている民泊の問題点と規制への動きを見ていきます。
改めて、民泊とは
ホテルや旅館等の本来の宿泊施設ではなく、一般の民家や店舗の空き部屋に泊まることを民泊と言います。これまでも農林業や漁業の研修等で研修生を民家に宿泊させたりといったことはよく行われてきました。無償で泊めるだけならそこに法的問題は生じません。しかし宿泊料を取って客を泊めることになると旅館業法の規制の対象となります。旅館業法は「旅館業」としてホテル営業、旅館営業、簡易宿泊所営業、下宿営業を規制の対象としています(2条1項)。そして民泊は簡易宿泊所営業に該当することになります。旅館業法によりますと「宿泊」とは寝具を使用して施設を利用することを言います(2条6項)。そして宿泊料とは寝具および部屋等、宿泊に供する設備の使用対価を言います。形式的に「宿泊料」という名目ではなくとも寝具使用料、寝具クリーニング代、休憩費といった実質的に設備使用対価と認められるものは宿泊料に該当します。これらに該当する場合は旅館業法に基いて許可を受ける必要があり(3条)、無許可で営業した場合には6ヶ月以下の懲役または3万円以下の罰金に処せられます(10条1号)。
国家戦略特区の場合
国家戦略特別地域(国家戦略特区)とは、地域振興や国際競争力向上を目的として独自の規制緩和を行う経済特区です。この国家戦略特区に該当する地域は国家戦略特別区域法13条によって旅館業法の適用を受けません。首都圏では東京都、神奈川県、千葉県千葉市、成田市が該当し、関西圏では大阪府、兵庫県、京都府が該当します。他にも新潟県、沖縄県等が該当します。これらの地域では、①7日~10日間の範囲で宿泊客と賃貸借契約を結ぶという形式、②一部屋の床面積が25平方メートル以上③使用開始時の清掃④外国語案内等の外国人向け役務提供等の要件を満たし、知事の認定を受けた場合、旅館業法上の許可を受けずに民泊営業を行えます。
厚労省の法改正への動き
厚労省は旅館業法の許可要件である床面積基準等を規定する政令を今年4月から緩和して施行しています。また有識者会議を経た上で許可制を登録制に改め、登録された管理者に利用者名簿の備え付け、宿泊者への注意事項の説明、近隣からの苦情の受付を義務付ける等の法改正を目指す考えを示しています。厚労省の発表では昨年度、無許可で営業を行っていたとして次自体による指導を受けた業者が約1000件に上り、旅館業法の許可要件を緩和して許可を受けやすくし、このような違法営業を防止することが狙いと言えます。
コメント
昨年の訪日外国人観光客は約2000万人近くに達し、政府は東京五輪が行われる2020年には4000万人を目指す方向で検討しているとしています。一方で急激に増加した観光客を受け入れるだけの宿泊施設が足りていないことも事実です。上記大阪府警に逮捕送検された容疑者も、外国人の宿泊施設が足りていないことが原因だと供述しています。そういった中、民泊への期待と需要は相当大きくなっていると言えます。しかし現行旅館業法と関連法規に基づく許可を受けるのはそれほど容易ではなく、許可を受けた民泊数が需要にとうてい追いついていないのが現状です。国家戦略特区に該当する地域では、当該地域の条例等に基づき知事の認定を受ければ営業できますが、床面積要件等、旅館業法より緩和されたとは言え一般の民家等ではまだまだハードルは低いとは言えません。一方で地方に行けば過疎化等により空き家が増えて社会問題化もしています。ホテル、旅館営業等の実績のある業者等がこれら空き部屋、空き民家等を一括して管理し、許可等を受けた上で大規模に民泊営業を行えるよう法整備を目指すことも一案ではないかと思います。
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