肥料成分の偽装、不正競争防止法における虚偽表示について
2016/12/14 コンプライアンス, 広告法務, 不正競争防止法, メーカー
事案の概要
秋田市の肥料メーカーである太平物産による肥料偽装問題で、県警が不正競争防止法違反(虚偽表示)の疑いで、2016年12月5日付けで、同社と元秋田工場長ら3人を秋田地検に書類送検しました。2013年4月ごろから2014年9月ごろにかけ、秋田市茨島の秋田工場で、有機原料の割合を実際よりも多く見せかけた商品を1,000袋製造し、取引先などを誤認させるような虚偽の表示をしてしまったとの疑いを持たれています。そこで、今回は不正競争防止法における虚偽表示について見ていきます。
本件について 秋田魁新報
不正競争防止法
不正競争防止法は、事業間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的としている法律です(同法1条)。
不正競争については同法2条1項各号に列挙されています。他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡する行為(同項3号、商品形態模倣行為)や競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知・流布する行為(同項15号、信用棄損行為)など、様々な行為が不正競争に該当します。そして、本件で問題となりうる虚偽の表示については、同項14号にて規定されています(誤認惹起行為)。
不正競争防止法
虚偽の表示
不正競争防止法2条1項14号は、商品・広告等における商品の原産地・品質・内容・製造方法・用途・数量について誤認させるような表示行為を不正競争行為(誤認惹起行為)として禁止しています。また、そのように表示した商品の提供等の行為も誤認惹起行為として禁止しています。商品だけではなく、役務(サービス)についても同号に同様に定められています。誤認惹起行為の例としては次のようなものがあります。
・商品にならない廃鳥を仕入れ、地域特産の地鶏として販売
・カシミア100%でないマフラーを、カシミア100%として販売
・外国産メロンについて、特に原産地を表示しないまま夕張メロンを彷彿とさせる形で販売
・ワインに「シャンパン」と大きく表示し、その横に小さく「タイプ」と表示して販売
虚偽表示について(PDF) 経済産業省
※不正競争防止法は頻繁に改定されるため、上記のPDFでは虚偽表示について2条1項13号となっておりますが、現在は14号となっております。
虚偽の表示によるリスク
虚偽の表示をした場合、民事上の請求をされるほか、刑事上の制裁を科されるおそれがあります。
民事上の請求として、まず、不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれのある者が、その行為を行った者に対し差止請求(不正競争防止法3条1項)をすることができます。また、営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれのある者は、損害賠償請求(同法4条)もすることができます。もっとも、営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれのある者とは、一般消費者ではなく競業関係などにある事業者であることに注意が必要です。一般消費者の不利益は営業上の利益に含まれないと考えられているためです。
刑事上の制裁として、虚偽の表示をした者は、5年以下の懲役若しくは500万円の罰金に処されます(同法21条2項1号、4号)。それに加え、虚偽表示が法人の業務として行われた場合、企業も3億円以下の罰金に処されます(同法22条1項3号)。このように、行為者・企業いずれにとっても非常に重たい制裁が待っています。
虚偽表示のリスクについて(PDF) 経済産業省
上記のPDFと同じものです。
コメント
以上のとおり、虚偽表示をすることで民事・刑事上のリスクを負うことになります。これを避けるためには、虚偽の表示をしない、あるいは誤認させるような表示をしないように注意することが重要です。また、他社の虚偽表示により自社の営業上の利益が侵害される場合(例えば、虚偽表示により他社の売り上げが伸び、その影響で自社の売り上げが下がってしまった場合など)も考えられますので、その際に、当事者間で解決するのか、あるいは裁判所の手続きを利用して解決を図るのかなどの対応をあらかじめ整理する必要があります。いずれの場合であっても、虚偽の表示か否かは判断が難しい場合がありますので、経済産業省や弁護士などに相談することも考慮すると良いかもしれません。
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