株式会社フジタに排除措置、競争者に対する取引妨害について
2018/06/26 コンプライアンス, 独占禁止法
はじめに
公正取引委員会は14日、東日本大震災の復興事業にかかる非公開の入札情報を入手するなどしたとして株式会社フジタに対し独占禁止法違反により排除措置命令を出しました。取引妨害行為に該当するとのことです。今回は不公正な取引方法の一種である競争者に対する取引妨害について見ていきます。
事案の概要
公取委の発表などによりますと、農水省および東北農政局は震災復興事業での一般競争入札で、入札価格だけでなく施工業者が提出する技術提案などを総合的に評価する施工体制確認型総合評価落札方式を採用しておりました。準大手ゼネコンの株式会社フジタは2015年頃、同社に再就職していた農政局のOBを通じて技術評価基準を入手したり、提案書を添削させたりしていたとされます。それにより複数の工事を受注していたとのことです。
独禁法による規制
独禁法19条では不公正な取引方法を禁止しております。そして2条9項各号と公取委告示である一般指定で具体的に内容を定めております。一般指定14項では「国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引について、契約の成立の阻止、契約の不履行の誘引その他いかなる方法をもつてするかを問わず、その取引を不当に妨害すること」を禁止しております。違反した場合は排除措置命令の対象となりますが(20条)、課徴金納付命令の対象とはなっておりません(20条の2~6参照)。
行為要件
競争者に対する取引妨害は自己と競争関係にある事業者がその取引相手と取引を行うに際して、その契約を阻止したり不履行を誘引するなどの妨害行為を行うことが要件となっております。その行為態様は広範で多種多様ですが、具体的には競争者の取引先に対して脅迫や威圧、誹謗中傷や物理的妨害などがあります。審決例では魚市場内に障壁を設置して競争者をせりに参加できないようにしたり、競争者の顧客が支払った代金分を値引きして顧客を奪う行為や競争者と取引している取引先だけ部品の納期を3ヶ月遅らせる行為、競争者の製品を取り扱う取引先にだけ廉価版を納入するといった行為が挙げられます。
効果要件
取引妨害における公正競争阻害性は競争手段の不公正、自由競争の減殺、あるいはその両方の側面がある場合があると言われております。取引妨害は本来の公正な競争の範疇とは紙一重の場合も多く、それ以外の不公正な取引方法よりも微妙な判断を要します。行為の反社会性や目的・効果から見て公正な競争を歪められる場合、競争が回避される場合などに公正競争阻害性が認められていると言えます。
コメント
本件でフジタは入札の際に求められる技術提案書に関し、元農政局の職員である従業員を通じてその採点基準を入手したり、その添削を行わせるなどして他の競争事業者よりも有利な立場に立って工事を受注していたとされます。公取委は今後このような行為を行わないことと再発防止について従業員に周知徹底し、研修と法務部による定期的な監査を行うという内容の措置命令を出しました。以上のように取引妨害は排他条件付取引や拘束条件付取引と比べ行為態様が広く曖昧と言えます。考え抜かれた取引ノウハウやスキームであっても場合によっては取引妨害に該当しているといったことも十分にあります。上記の審決例などを参考にし、競争関係にある事業者の取引を不当に妨害する結果となっていないかを慎重に見直すことが重要と言えるでしょう。
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