【改正民法】契約解除に関する変更点について
2019/07/16 契約法務, 民法・商法, 法改正
はじめに
平成29年5月26日に成立した改正民法が来年2020年4月1日から施行されます。民法制定以来の大改正となっております。今回は改正債権法のうちの契約解除の変更点について見ていきます。
現行民法の契約解除
現行民法では債務不履行(民法415条)の要件を満たした場合に契約の解除権が発生します。債務不履行は履行遅滞、履行不能、不完全履行の3種類がありそれぞれ解除権発生の要件が異なっております。履行遅滞の場合は債務者の帰責事由による遅滞、相当の期間を定めての催告、催告期間内に履行がなかったことが要件となります(541条)。不完全履行の場合は債務者の帰責事由による不完全履行、追完の催告が、履行不能の場合は債務者の帰責事由による履行不能が要件となります。いずれの場合も債務者の帰責性が求められております。
改正民法の契約解除
いっぽうで改正民法においては契約解除には債務者の帰責性は求められなくなりました。つまり不可抗力による滅失などによって履行できない場合も解除することができます。債務者に責任が有ろうと無かろうと債権者にとっては履行を受けられないことに変わりはなく、そのような契約から債権者を開放することが改正法の趣旨と言えます。そしてこれまでと同様の催告解除と、一定の要件のもとに無催告解除ができるようになります。以下具体的に見ていきます。
解除の具体的要件
(1)催告解除
債務者が履行しない場合、債権者は一定の期間を定めて催告し、その期間内に履行がない場合は契約を解除することができます(改正民法541条)。上記のとおり現行民法との違いは債務者の帰責性を求めていないことだけで、それ以外は基本的に同じと言えます。ただし不履行が契約や取引上の社会通念に照らして軽微な場合は解除できないことになりました(同ただし書)。これは現行民法下での判例法理が明文化されたものです(最判昭和36年11月21日)。
(2)無催告解除
改正民法で新たに追加された規定として無催告解除があります(改正民法542条)。債務の履行が不能となった場合などに認められるものです。履行不能の場合は現行民法でも催告なく解除はできます。これはそもそも履行が不能なのに履行を促しても無意味だからです。今回の改正で無催告解除の範囲が拡張されました。無催告解除ができるのは、①全部履行不能、②全部の履行拒絶の意思を明確に表示したとき、③一部の履行不能または履行拒絶の意思を明確に表示した場合で契約の目的を達成できないとき、④特定の日時または一定の期間内でなければ目的を達成できないとき、⑤その他催告しても目的を達する履行の見込みがないときです(改正民法542条1項各号)。つまり契約の目的が達成できるかが重要なポイントとなります。
コメント
以上をまとめると、催告解除では債務不履行が軽微かどうか、無催告解除では契約の目的を達成できるかどうかが重要なポイントと言えます。この点を留意して契約書を作成していくことが必要です。なお解除の効果については従来どおり契約は最初に遡って無効となると言えます(大判大正6年12月27日)。このように今回の大改正では条文が平易な文章になったことに加え、これまで判例法理として定着していた考え方が明文化されております。そして特に債権法では「契約」というものを重視して債務不履行や危険負担、担保責任などの規定が再構築されております。これらについても後日取り上げたいと思います。改正民法に関してはその基本理念や考え方を念頭に置いてこれからの契約書の作成や審査への準備を進めていくことが重要と言えるでしょう。
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